【相続の話し合いで役立つテクニック】遺産分割で優位に立つためのさりげない「譲歩引き出し術」 注意すべきはお堅い法律用語を使わないこと
実家に帰省する際、片付けておきたいのが相続に関する家族との話し合いだ。家族が集まるタイミングで遺産の整理や配分について話し合っておけば、手間を大幅に省けるだけでなく、相続を優位に進めることも可能になるという。 【表】「お母さんがひとりになった後に心配だからそろそろ相続のことを話そう」…他、主導権を握る賢い相続話の切り出し方
まずは、話し合いや大掃除で家族が所有する財産を把握。その次は「遺産分割」の話し合いを進めたい。税理士法人ブライト相続代表の天満亮氏が語る。 「相続で揉めるのは、長男には『家をやる』と伝え、次男には『平等に分ける』と伝えるなど、親の言うことがバラバラなケースが多い。 親が元気なうちに、家族全員が揃った場で親の考えを共有しておくことが大切です。親自身の口で分け方を家族の前で伝えてもらえれば、遺産分割時の証拠になります」 とはいえ、誰もが「取り分は増やしたい」と思うもの。遺産分割を有利に進めるためには、さりげなく要望を伝えることも必要だ。 「親と同居する子の場合、『この間お母さんを病院に連れて行くのが大変だった』などと苦労自慢にならないようさりげなく家族に話しておく。家を出たきょうだいは引け目に感じている部分があるので、『この家はあげるよ』と譲歩してもらいやすい」(同前) ここで注意したいのは、お堅い法律用語を使わないことだと天満氏。 「家族会議の場で『法定相続人が』『寄与分が』などと日常生活では使わない法律用語を使うのは避けましょう。相続の準備をしてきた感じを出すと、家族は警戒します」
借金が出てきたら
一方で、親の財産はプラスばかりではない。近年は住むことも売ることもできない「負動産」を相続して売却に苦しむケースが多い。 「大掃除で地方の土地の権利書などが出てきたら要注意。負動産が発覚したら『お父さん、今のうちに処分してくれると助かるんだけど』と早めに相談しておきたい」(同前) 借金やローンがどれだけあるのかも確認しておこう。ファイナンシャルプランナーの馬渡初代氏が語る。 「消費者金融の借り入れは督促状があれば発覚しやすいのですが、見つかりにくいのがクレジットカードのリボ払いです。親の通帳を見て、均一金額の引き落としが長く続いていれば、リボ払いの可能性があります。リボ払いは親が死ぬと相続人に一括で請求が来る可能性があるので注意が必要です。懸念があれば、利用しているカード会社に確認することです」 親の借金に関しては、ストレートに聞いてよいと天満氏は指摘する。 「『親父、借金ないよね』『不安だからあるなら教えてね』と言えば、大抵の親は考えてくれるはずです。相続の話題の切り出し方と同様に、母を通じて『子供が心配しているから』と尋ねるのも効果的です」
負動産や借金が多い場合、「相続放棄」という選択肢がある。 「相続の発生を知ってから原則3か月以内の手続きが必要ですが、家族会議でマイナスの財産が発覚したら、早めに相続放棄を決めておくこともひとつの手です」(同前) “外れクジ”を回避することも、相続で損をしない秘訣である。 ※週刊ポスト2024年12月27日号