[立川談笑さん]甲状腺がんの診断に「落語をできなくなるかも」…つらかった脂肪ゼロ、ヨウ素制限の食生活
麻酔から覚めて、「あー」と声を出した
――2021年5月に手術をされたということですね。 麻酔から目が覚めて、まず声を出しました。「あー」って。次に「ドレミファソラシド~」。視界に入る看護師さんたちに向かって「声、出てますよね」「声、出なくなるって、ずいぶん驚かされたんですよ」って、ずっとしゃべりっぱなし。 相当うるさかったでしょうね。でも、看護師さんは優しいから、文句も言わずにつきあってくれました。 腫瘍の大きさは58ミリもあったんですよ。ゴルフボールぐらい。私は見たわけじゃないですけど。子供のころから触るとゴリゴリとするのはわかっていましたが、そんなに大きいとは。 もともとあった良性の腫瘍が悪性に変わったのではなく、良性の腫瘍の横に、新たに悪性の腫瘍ができていたと言われました。先生方も驚いておられたようでしたね。 大きさもさることながら、やはり反回神経をがっちりつかむような形になっていたそうです。ですから、神経を切っちゃってもおかしくない話だったと思うんですよ。そこを上手に手術していただいた。本当にありがたかったと思います。
「つらかった」脂肪分ゼロの食事
――手術の後は順調だったのですが。 郭清(かくせい)術というんだそうですが、首のリンパ腺まわりも切除したので、リンパ管に傷がついている。リンパの中には、食事から吸収された脂肪の粒が流れているんですって。その脂肪が微細な傷から体内に流れ出て、胸の中にたまると悪い病気になる。この傷が治るまでの間、脂肪分を一切取っちゃいけないと言われました。 その脂肪を乳糜(にゅうび)というのですが、乳糜が漏れる「乳糜漏」を防ぐために、脂肪分ゼロの食事を取らないといけない。 ――脂肪分ゼロって、何を食べるんですか。 ささみとか、鶏の胸肉の脂肪を外したものを塩コショウでいただく。そういうのをずいぶん食べましたね。 肉や魚は脂のないもの。脂の乗ったブリはダメ。揚げものはダメ。パンもマーガリンとか使っているからよくない。だから、ごはん、そば、うどん。ドレッシングも油を使ったものはダメ。1か月、おいしいものが食べられなかった。 ――手術からどのくらいで退院されましたか。 1週間ぐらいで退院して、その後もトータルでひと月ぐらい脂肪制限食だったんじゃないかな。 ――奥様が作ってくれたんですか。 ですね。あと、私も料理しますので。 ――大変ですよね。脂肪の入ってない魚とか探さなきゃいけないじゃないですか。 そうです。(笑)。つらかったですね。やっぱり食べ物って大事なんだ。あと1週間乗り越えられればっていう気持ちで頑張りました。次もあるとは知らなかった。