なぜ浦和「声出し応援問題」に苦言程度だった野々村チェアマンが2000万円罰金&無観客試合などの”最終警告”を発令したのか?
サポーターに対して毅然とした態度を取れなかった浦和が、ようやく声明を発表した。つまりは一部サポーターを管理できるかどうか、自浄能力を発揮して問題を解決できるかどうかを、リーグとして問える明確なバロメーターが生まれた。 ただ、臨時実行委員会後の会見ではこんな質問が飛んだ。無観客試合や勝ち点剥奪は非常に重い処分だと感じるが、それだけ重いものだと受け止めているのか、と。野々村チェアマンは「もちろんです」と同意した上で、さらにこう語った。 「リーグとして同じ方向性でやっていくのであれば、ここではこういった対応を取らなければ、リーグとして他のクラブに対しても他のサポーターに対しても示しがつかない。バランスを考えたら、こういう対応になるのは仕方ないのかな、と」 欧米のサッカーシーンを取り巻く状況とJリーグの現状とを比較して、違和感を募らせているファン・サポーターがいる状況を野々村チェアマンは認める。コロナ禍以前の熱狂を取り戻したい、という思いと受け止めながらこう語っている。 「Jリーグとしては日本の基本的対処方針に則りながら、少しでも緩和される方向を探していく。一方で基本的対処方針そのものを大幅に変えていく働きかけは、リーグとして僕が責任を持ってやっていく。そのすみ分けは再度お伝えしたい」 声出し応援の段階的な緩和を進めているリーグが次に目指すのは、声出し可能エリアで収容人員の50%、禁止とするエリアで同100%の状態。これらが可能になれば、野々村チェアマンは「クラブの経営的な部分もだいぶ楽になる」と思い描く。 Jリーグ規約の第141条では、チェアマンが制裁を科せる個人として「選手、監督、コーチ、役員その他関係者」と定めている。リーグがサポーターを直接処分できない以上は、野々村チェアマンが繰り返したように、クラブの自浄能力にかかってくる。 「声を出して前へ進んでいく、制限をなくして元を取り戻したいというサポーターの思いをどのようにして管理していくのかを、もちろんどのクラブも苦労している。そのなかでもようやくここまで来たのだから、みんなでもう一回頑張っていこう、という空気は今日でひとつ醸成できたのかな、と。Jリーグの仲間として同じ方向へ向かっていこうと、いろいろな実行委員から浦和に対して投げかけてくれたと思っています」 段階的な緩和を進めていく上でも、自治体をはじめとするホームタウンの理解は欠かせない。だからこそ、現状の基本対策方針のもとでの試合運営と安全性の実証が求められる。ホームの埼玉スタジアムに京都サンガF.C.を迎える今日6日の明治安田生命J1リーグ第20節から、ボールを預けられた形の浦和の姿勢がさらに問われてくる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)