2025年に上陸する!? 全長4m以下の電動コンパクトSUVヒョンデ「インスター」は走りもデザインも好印象! 日本車もウカウカしていられない
当たり前のことが当たり前にできている走り
そんな「インスター」の走りはどうだったのか? 今回は2日間に渡り、韓国の一般道や高速道路を走りましたが、コンパクトカーとは思えないドライブフィールにビックリ。試乗前は「韓国の軽自動車から派生したBEVなので、走りには割り切りが必要かな?」と勘ぐっていましたが、いい意味で予想を裏切られました。
ステアリング系は、取り回し重視の軽めの設定ですが、手ごたえがシッカリしているのでフワついた感じはありません。 コラム式の電動パワーステアリングは若干フリクションが感じられ、なめらかなフィールとはいかないものの、ドライバーの操作には忠実な印象です。 フットワークは、バッテリー搭載による低重心化と前後重量配分の適正化、さらに、ロングホイールベース化が大きく効いています。 直進時は全幅1615mmであることを忘れてしまうほどドッシリしており、ステアリングに軽く手を添えているだけでビシッとまっすぐ走ります。 ハンドリングは、スポーティやワクワクといった過度な演出は一切なく、操作した分だけ素直に曲がってくれるピュアな印象です。 応答性や挙動変化を含めたコーナリング一連の流れはおだやかながらダルではなく、旋回時はまるでトレッドが拡大されたかのような安定感と前輪駆動らしからぬ4輪を効果的に使った姿勢で曲がり、そして、ちょっと無茶な操作をしても基本は安定方向……などの乗り味を実感しました。要するに、当たり前のことが当たり前にできている走り、というわけです。 快適性は、オールシーズンタイヤ特有の硬さを感じない、といえばウソになりますが、ストローク感の強いサスペンションによる快適性は多くの人が「乗り心地いいね」と感じることでしょう。 ちなみに、韓国の一般道や高速道路のサービスエリアなどには、スピードを落とすためのバンプがいくつも設置されていますが、それを乗り越えるときのショック/や振動も上手に減衰され、乗員にはあまり伝わってきません。 ただそれがゆえに、高速道路の大きなうねりではショックの収まりの悪さが少々気になりました。ヒョンデの他のモデルは、日本仕様に専用のセッティングが施されていますが、「インスター」の日本仕様はどうなるのか? 個人的にはもう少し操縦安定性重視の仕立てになると予想しています。 静粛性は、BEV化に伴うボディ剛性アップによる振動低減、アコースティックガラスや2重シール、ラゲッジボードやアンダーカバーの採用などにより、ロードノイズに不利なオールシーズンタイヤ、風切り音に不利なボディ形状ながら、それらが気にならないレベルにまで抑えられています。ちなみに、低速走行時は車両接近警報音が最も気になるくらいの静かさでした。 パワートレインは、スペック以上の力強さを実感。韓国は日本よりもドライバーの運転がアグレッシブ(⁉)なので瞬発力が求められますが、そんなシーンでもへっちゃらで、交通の流れをリードできます。ただし、アクセルペダルを踏んだときのトルクの“立ち上がり”は強いものの、そこから先の“伸び”はいまひとつかな……と。 ドライブモードは3種類(ECO/ノーマル/スポーツ)が用意されていますが、「ノーマル」でも加速の立ち上がりが少々元気すぎる感じがしたので、日本仕様は「ECO」と「ノーマル」の間くらいになると好ましいでしょう。 BEVで気になる電費は、高速7割、一般道3割くらいを何も意識せずに走らせても8.5~9.0km/kWhを記録。走行前の航続距離とトリップメーター+残りの航続距離の誤差も少ないため、おそらく実用での航続距離は350km前後までいけるのではないかと思います。 * * * さて、そろそろ結論とまいりましょう。 「インスター」はある意味、“日本車よりも日本に最適なBEV”といえるのではないかと感じました。 もちろん、韓国車に対してはさまざまな感情を抱く人もいると思いますが、少なくともハードウェアに関しては、日本車もウカウカしていられないレベルにあると思います。 気になる価格は、海外メディアが「欧州で2.5万ユーロ以下を約束」と記しています。日本では、兄貴分となる「コナ」が400~500万円であることを踏まえると、フル装備で消費税込300~350万円くらいとなることを期待しています。補助金を活用すれば、多くの人にとってかなり現実的な選択肢になることでしょう。 ひとつ気になる点を挙げるとすれば、「ヒョンデを選んだ」といううれしさが感じられにくいことです。もちろん、工業製品としてはとても優れているのですが、クルマという商品の魅力は? と問われると、残念ながら“いい人”で終わってしまうのです。 実はこの辺りの印象は、ヒョンデの他のモデルでも抱いてしまいがち。思わず“指名買い”したくなるような決め手に欠けるのが、残念なところです。 個人的には、ハードウェアが優れているからこそ、しっかり味をプラスして“らしさ”をより強く表現できれば、ヒョンデはもっと化けるだろうと思っています。
山本シンヤ