「最後の911」のはずだった「911SC」に試乗! 旧き佳き空冷ポルシェの芳香が色濃く残るドライブフィール…乗りこなすための流儀とは【旧車ソムリエ】
RRのトラクションと強烈にレスポンシブなボクサー6
でも、ひとたび一定のスピードに達し、トルクの「乗り」が、そのまま車体全体の動きに直結しているようなダイレクトなフィールを体感してしまえば、このクルマとの距離はグッと縮まってくるような気がする。 同じ空冷911でも、964シリーズや993シリーズが野太い咆哮を発するのに対し、こちらはナロー911以来の「シュルルルルッ」という甲高いボクサー6サウンドに、少しだけ「コブシを利かせた」エキゾーストノートを放出する。 低回転域では空冷クーリングファンのバサついた音の方が大きく耳に入ってくるのだが、3000rpmを超えてボクサー6本来のサウンドが聴こえてくるころには、車体全体がアクセル操作によってコントロールできるような感覚が味わえるようになってくる。 また、いわゆる「ポルシェシンクロ」時代のシフトチェンジは、タイミングを誤ると明らかな引っかかりを感じるものの、うまく回転を合わせさえすれば、レバーが自然と各速に吸い込まれるように入ってくれる。 もちろん、もとよりドライビングスキルが大したことないうえに、ポルシェ門外漢にも等しい筆者が空冷911の真髄のようなものに触れられるのは、ほんのひと時に過ぎないのかもしれない。 それでもカーブの曲率を問わず、クルマの向きをしっかり定めたのちに、RRのトラクションと強烈にレスポンシブなボクサー6の特質を活かした立ち上がり重視のコーナーワークを体感してしまうと、ナロー時代から綿々と引き継がれてきた空冷911の魅力に傾倒してしまう911エンスージアスト諸氏の気持ちが、わずかながらでも理解できそうな気がしてきた。 たしかに、記憶の片隅に残る911カレラ3.2と比べると、こちらの911SCは緻密にして濃密な911の世界観がより強く残されている気がした。「乗りこなす」、あるいは「クルマに人が合わせる」というプロセスが必須だったポルシェ911の芳香を残す、最後の世代となったのが、この911SCだったのではないかと実感したのである。
武田公実(TAKEDA Hiromi)
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