「マスメディア」以上に「SNS」が社会を揺り動かした2024年…匿名の「心の声」を“信じてしまう”のはナゼか
つまりこの結果から、「実名アカウントよりも匿名アカウントのほうがより無責任なことをツイートする傾向がある」ことが窺えるのだ。周知のとおり、実際にTwitterでは匿名アカウントによるフェイク情報や、見ず知らずの人からの露骨な誹謗中傷やヘイトが溢れている。
内心を文字化するツール
Twitterにこうした無責任な情報が多く現れるのには、匿名性に加えもう1つ原因が考えられる。それは「内心を文字化しやすいSNS」であるということだ。 Twitter社の名の由来にもなった「tweet」という英単語には、元々「小鳥がさえずる」「つぶやく」という意味がある。 先述の通り、mixiやFacebookと違い、誰かと強く深い繋がりをもって交流するというよりは、誰に向けるでもない「ひとりごと」や「内心の本音」に近い“直感”を文字化できるのが特徴でもある。つまり、その言論空間を「心の中」そのものとして捉えやすい構造があるのだ。 日本国憲法では、心の中で何を考え何を思うかは他人から一切干渉されないという「内心の自由」が保障されているが、先のとおりそのリアルな心のうちをTwitterはそのまま投影しやすいため、「建前」というフィルターを通さない言葉が溢れるのである。
SNSの仕組み
また、SNSにはユーザーの興味・関心を学習したアルゴリズムによって、「フィルターバブル」が発生しやすいという特徴もある。つまり、自分にとって興味がある、または都合のいい情報ばかりが流れてくることで、視野が狭くなり、偏った思想に陥る傾向があるのだ。 さらに動画系SNSにおいては、その内容が1分、時には数十秒ほどにショート化&テーマ化される傾向があり、情報が限定的になりやすいうえ、収益化を図る「クリエイター」や「インフルエンサー」によってセンセーショナルに「盛られる」ことも少なくない。 先の兵庫県知事選では「オールドメディアは役に立たないので、自分からSNSで情報を“取りに行った”」という人が大勢いたが、SNSにおける情報収集は、いくら取りに行ったところでそこはフィルターバブルの中。「オールドメディアは役に立たない」という言説をSNSで見聞きし丸呑みにしている人たちは、その時点でもはやSNS、ひいてはそのアルゴリズムをつくりあげた開発者たちの手のひらで転がされていることに気付いていないのだ。