「大谷翔平はトロントに飛んだ」史上最高の1千億円契約、その直前に起きた大混乱の「内幕」 錯綜する情報、有力記者が大誤報、代理人の大勝負…記者が見ていた裏側
▽発表は大谷自身 9日、有力記者のスクープを許すことなく、ドジャース入りを伝えたのは大谷自身だった。インスタグラムで発表すると、同時に代理人事務所も10年総額7億ドル(約1015億円=為替レートは入団合意時)の契約合意を公表。スポーツ史上最大規模の契約だった。 大リーグには年俸総額が基準額を超えた球団に課徴金が課される制度があり、この制度上では大谷の年俸は約4600万ドルと計算される。そのため実質の契約総額は4億6千万ドルとも米メディアで指摘されているが、1年平均ではマックス・シャーザー(レンジャーズ)とジャスティン・バーランダー(アストロズ)の約4333万ドル、総額でもマイク・トラウト(エンゼルス)の4億2650万ドルを上回り、メジャー史上最高額だ。契約規模、発表の仕方。全てにおいてバレロ氏の面目を保った結果となった。 同僚の関係者への取材では、大谷は6年前にメジャー挑戦を決意した際にもロサンゼルスに対する強い希望を持っていたとの証言もあり、今回もドジャース移籍もしくはエンゼルス残留の2択ではないかと見立てていた。最終候補に残ったブルージェイズやジャイアンツは条件をつり上げるための「おとり」に使われたとみる向きも根強いが、真相は分からない。メッツなどさらに資金力豊富な球団は他にもあっただけに、個人的にはその見方にもやや疑問が残る。少なくとも年俸の大半を後払いにする選択をした選手本人には、契約金額に強いこだわりはなかっただろう。
▽ジェットコースター ドジャースのアンドルー・フリードマン編成本部長は、トロント行きの騒動があった8日の心境を「ジェットコースターのようだった」と振り返った。今後、交渉の内幕の全容が明かされる日が来るかは分からない。スポーツに限らず交渉は情報戦の面があり、メディアが利用されることも珍しくないし、語られる言葉が必ずしも真実とは限らない。特に今回は情報が錯綜し、混乱を招いた。自戒するとともに、あらゆる関連情報を転電し、過剰に報道する潮流には思うところもある。 大谷がFAになってから1カ月以上にわたった「狂想曲」。ともあれ、本人は望んだ球団でプレーし、ドジャースは念願の選手をチームに加え、代理人は栄誉を手にする大団円になった。