「大谷翔平はトロントに飛んだ」史上最高の1千億円契約、その直前に起きた大混乱の「内幕」 錯綜する情報、有力記者が大誤報、代理人の大勝負…記者が見ていた裏側
メジャーの移籍や契約に関するスクープは、各球団の番記者よりも「ナショナル・ライター」と呼ばれる記者から大半がもたらされる。スポーツ専門局ESPNのジェフ・パッサン記者やスポーツ専門サイト「アスレチック」のケン・ローゼンタール記者らがそれに該当する。モロシ記者もその一人だった。 恥を忍んで言えば、米メディアに情報網では太刀打ちできないのが現状だ。確かに大谷が別の空港からカナダに向かっている可能性もないとは言えない。事態をもう少し、見守ることにした。 しかし、約1時間後、他の有力記者が一斉にXで「大谷は南カリフォルニアの自宅にいる」と情報を否定。カナダメディアによると、飛行機から降りてきたのは偶然か否か、大谷と同じ代理人事務所の顧客であるカナダの実業家ロバート・ハージャベック氏だった。別人と判明し、日本、米国、カナダのファンや関係者を巻き込んだ騒動は収束。全てが終わった後、筆者は顛末を記事で配信し、同氏はその後、一連の騒ぎへの意図的な関与を米メディアに否定した。
▽代理人の大勝負 複数の代理人への取材を総合すると、大谷の代理人のネズ・バレロ氏にとって、今回の契約交渉は沽券に関わる大勝負だったという。過去の契約では手腕を疑問視する声もあったからだ。唯一無二の「二刀流」で突出した実績を残し、歴史に名を残す大谷にふさわしい契約を勝ち取れなければ「失敗」の烙印を押されかねない。情報管理を徹底し、交渉過程が表に出ることはほとんどなかったが、最終段階にきて情報が漏れ始めた。 最初に具体的な動きを伝えたのは、ドジャースの宿敵ジャイアンツの地元紙サンフランシスコ・クロニクルだった。本拠地で幹部が大谷と面談したとの記事を掲載。「噂」とオブラートに包んだ表現だったが、球場を出発する編成幹部の写真も添えられていた。続いて1千億円超の契約を用意しているとの情報があったブルージェイズとのフロリダ州での面談が報じられ、その後ドジャースのデーブ・ロバーツ監督が自ら大谷との接触を認めた。極めつきが「大谷のトロント行き騒動」…。