桂由美 93歳「日本で初めてウェディングドレスのデザインを手掛けてから60年。絵本の白雪姫に憧れ、東京大空襲も乗り超えて」
卒業制作のファッションショーを行おうとしたら、ウェディングドレスに合わせる髪飾りやブライダルブーケもないので、自分たちで作るしかありませんでした。 困ったのが靴です。卒業制作のショーを行うのは2月。生徒が「白い靴、売ってません」と泣きながら学校に帰ってくるので、私も一緒について行き、靴屋さんに頼んで前の夏の売れ残りを倉庫で探してもらったりしました。 苦労した生徒たちは、「先生、ブライダルに関するすべてのものを扱うお店を開いて、ウェディングドレスを着たい人を助けてあげればいいのに」などと言います。そういうお店がないのは、需要がなく、採算が取れないからです。 でも生徒たちに言われたことで、誰もやっていないことをやるのは意義があるのではないか、と考えるようになりました。 母に相談すると、学校の仕事と両立できるならやってもいい。そのためには、人の2倍、3倍がんばらないとダメだ、と。私はつい、「がんばるから!」と宣言してしまいました。 そんなわけで、さっそく物件探しを開始。見つけたのは、近々廃業する赤坂の時計屋さんでした。開店前に約10ヵ月かけて、世界のブライダル事情を視察することに。 それぞれの国でどんなスタイルのドレスを着て、結婚式にどのくらい費用をかけて、どんなパーティを行うのか。つぶさに見てこようと思ったのです。 (構成=篠藤ゆり、撮影=大河内禎)
桂由美