ロシアによるウクライナへの長距離ドローン攻撃が激増 中国製も使い始めた可能性
最も警戒すべき中国製「ガルピヤ3」
■中国製の「ガルピヤ3」 最も警戒すべき新型ドローンは「ガルピヤ3」(ガルピヤはロシア語で「ハルピュイア、ハーピー」の意味)だ。ロイター通信の報道によると、ガルピヤ3はロシア国有の兵器メーカー、アルマズ・アンテイの子会社によって設計され、弾頭重量50kg、航続距離およそ2000kmとされる。 ガルピヤ3は中国製の部品を使っているだけでなく、ロイターによるとメーカー側はロシア国防省に、中国の工場で大量生産できるとも報告したという。 中国がシャヘド型攻撃ドローンを製造していることはすでに知られていた。2023年9月の動画には、中国の「向日葵200」ドローンの試験の様子が映っている。やはり花の名前が付けられたこのドローンはシャヘドの完全なコピーとみられる。 また、ある中国企業は一時、別のシャヘドクローンをアリババのオンラインマーケットプレイスに出品していた。「XHZ-50」というこのドローンは「測量・地図作成・検査」用として、5万7000ドル(現在の為替レートで約840万円)で販売されていた。「最大積載量50kg」と紹介されていたこのドローンにあとで弾頭を仕込めば、SUV(多目的スポーツ車)と同じくらいの価格で戦略爆撃兵器を調達できていたかもしれない。 中国が実際に自国の産業用ドローン製造能力を活用してロシアに戦略兵器を供給するのであれば、その数を制限するものはロシアの支払い能力だけということになる。ロイターが閲覧した文書は、すでに2機のガルピヤ3がロシアの仲介業者を介してアルマズ・アンテイに納入されたことを示している。納入日は不明なので、すでにより大規模な出荷が行われている可能性もある。 ■近づく冬 ウクライナはこれまで、月に400~600機のシャヘドの波を撃退してきた。地対空ミサイルの備蓄が減少するなかで、その2~3倍の数を迎え撃つのはさらに大きな課題になるだろう。ウクライナのインフラはこの2年半あまりの間に何度も打撃を受けており、今後さらに激しい爆撃が続けば壊滅的な被害を受けるおそれがある。 ウクライナとしては、飛来してくるドローンに対する識別力を高めることが重要だ。防御側は一回り小さいイタルマスやガルピヤを見分けることができれば、真の脅威への対応に注力できる。また、ロシア軍の偵察ドローンの有効な撃墜手段になっている新兵器、迎撃FPVドローンがシャヘド型攻撃ドローンに対しても有効だと証明されれば、ゲームチェンジャーになるだろう。 はっきりしていることが2つある。ひとつは、ウクライナの防空能力を高める必要があるということだ。これには西側諸国ができる。もうひとつは、おそらくイスラエルを例外として、世界のどの国も、将来の戦争で起こりそうな長距離ドローンの大量攻撃への準備はできていないということだ。
David Hambling