ロシアによるウクライナへの長距離ドローン攻撃が激増 中国製も使い始めた可能性
ショッピングモール生まれの「イタルマス」
これまでに、ベーシックなシャヘドに改良を加えたものがいくつか確認されている。新しいバージョンでは少なくとも3種類の弾頭が知られているほか、ウクライナの携帯電話ネットワーク経由で通信する4Gモデムを備えたものもある。最近、衛星通信サービス「スターリンク」の端末を搭載したシャヘドも発見された。機体の色は現在は黒が標準的だ。レーダー波吸収素材が使われているとされ、おそらく夜間に見つかりにくくするという目的もあるのだろう。 シャヘドは以前は非常に低高度で飛来してきていたが、ウクライナ側が機動防空グループを多数配備するようになったことから、現在は目標に接近するまでは高高度を飛行するようになっている。そのため、高価なミサイルか、ヘリコプターなどの航空機でしか迎撃できない。 ウォールストリート・ジャーナル紙の5月の報道によれば、ロシアはシャヘドを月に500機生産することを目指している。だとすると、それをはるかに上回る現在のドローン攻撃数は、ほかの種類のドローンも使われていることを示唆する。 ■ショッピングモール生まれの「イタルマス」 本誌が2023年8月に報じたとおり、ロシアのドローンメーカー、アエロスカン(Aersocan)はロシア西部イジェフスク市内のショッピングモール「イタルマス」を買収し、テナントをすべて追い払ってドローン工場に変えた。航続距離が200kmを超える徘徊弾薬と説明されている新型機「イズデリエ54」(イズデリエはロシア語で「製品」の意味)用の生産施設とみられる。アエロスカンの系列会社であるザラが手がけるランセット戦術自爆ドローンの「イズデリエ52」型と「イズデリエ53」型は大きな成功を収めている。また、「イズデリエ55」はジャミング(電波妨害)に耐えられると謳われている。 イズデリエ54は2023年9月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がアエロスカンの施設を視察したことを伝えたニュース映像の背景に映り込んでいた。シャヘドに似たデルタ翼のレイアウトをしている。