病院送りTKOで世界Sミドル級を3団体統一した”カネロ”アルバレスが試合後乱入のもう一人の世界王者とキレて異例”場外戦”
プロボクシングのスーパーミドル級の世界3団体統一戦が8日(日本時間9日)、米テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで7万3126人の観衆を集めて行われ、WBA世界同級スーパー、WBC世界同級王者のサウル“カネロ”アルバレス(30、メキシコ)が、8回終了時の棄権によるTKO勝利で、WBO世界同級王者のビリー・ジョー・サンダース(31、英国)を下しベルトを統一した。試合後にカネロは、4団体統一を狙いIBF世界同級王者のカレブ・プラント(28、米)と9月にも戦いたい意向を示したが、試合後の会見に無敗のWBO世界ミドル級王者のデメトリアス・アンドラーデ(33、米)が乱入して対戦を熱望。カネロと口論に発展するなどの”場外戦”があった。パウンド・フォー・パウンド(階級関係なしの世界ランク)で1位に評価される“最強カネロ”はどこへ向かうのだろうか。
右アッパー一発で右目周辺を複雑骨折
一撃で英国人王者の顔面を破壊した。 8ラウンド。サンダースが繰り出した大振りの右のフックに反応したカネロは、それを外すと同時にフックともアッパーともとれるブンと音がするような強烈な一撃を顔面にお見舞いした。フットワークとサウスポーの利点を生かした右のジャブで、ここまでなんとか試合を作ってきたサンダースの右目の周囲が、みるみる変色。塞がっていく。勝利を確信したかのようにカネロは両手を上げて7万人を超える観衆をあおった。まだ1分以上時間が残されていたが、サンダースはガードを高く固めたまま逃げまくり、息も絶え絶え、このラウンドの終了のゴングを聞いた。コーナーに帰ると白いタオルを頭からかぶり、トレーナーのマーク・ティブスの問いかけに何度もクビを振った。 「目が見えないんだ」 棄権を申告してのTKO決着…。 カネロは、サンダースが試合をもう投げだすことを予期していた。トレーナーのエディ・レイノソに「棄権するぞ」とつぶやいた。 「奴が棄権するのはわかっていた。頬の骨を折ったと思うし、彼は、もう出てこないだろうとトレーナーに言ったんだ」 この試合まで無敗を守ってきたサンダースは、会見に出席することなく病院に直行した。プロモーターのエディ・ハーン氏によると、「右目の周囲の骨を複雑骨折しているようだ。すぐに手術を受ける」という。眼窩底骨折だけではなく、さらに周辺の骨も痛めたと推測される。想像を絶するカネロの破壊力である。 序盤はサンダースのフットワークと距離に戸惑い、手を出すことができなかった。ただパワーとスピードは段違いでカネロが上。効果打でポイントは奪っていたが、なかなか仕留めきれずにいた。スタンスを広げ、いつでも逃げられるように用心に用心を重ねてボクシングをしていたサンダースも、ステップバックでカネロのパンチを外すタイミングをつかみかけ攻勢に転じようとしていた。だが、カネロは、もうサンダースのすべてを把握していた。 「敏速に対応できていた。6、7ラウンドが終わった後に、これが決勝ラウンドになることはわかっていたんだ」とカネロは言う。 8ラウンドまでの採点でもカネロが「77―75」、「78―74」(2者)とリードしていた。