大谷翔平、山本由伸…巨額投資でメジャーリーグの盟主をもくろむドジャースの野望
巨額投資が「今季」だったわけ
大谷の加入は長い公式戦、そしてプレーオフを勝ち抜くためだけでない。爆発的な人気を集める大谷がほぼ毎試合「DH」として出場するだけに、昨季までも好調だった観客動員はさらに大幅増が見込まれる。すでに発売されている本拠地ドジャースタジアムでのチケットは入手困難な状況となっており、高騰化が進んで早くもプラチナペーパーとなった。 このほか広告料、グッズの売り上げなどの大幅増加も見込まれており、関西大の宮本勝浩名誉教授の試算によると、大谷の移籍による24年の経済効果は約533億5200万円が見込まれる。大谷が今後10年間プレーすることを考慮すれば、球団の資産価値も世界トップクラスとなるに違いない。その意味でも、大谷を獲得するタイミングは選手として絶頂期を迎えた昨オフがベストだった。 今やドジャースにとって、プレーオフに進出することは単なる目標ではない。プレーオフを勝ち抜かない限り、最後に笑顔では終われない。 交渉期間中、オーナー陣が残した言葉が大谷の胸に響いたという。 「『ドジャースが経験したこの10年間をまったく成功だとは思っていない』とおっしゃっていたので、それだけ勝ちたいという意思がみんな強いんだなというのは心に残ったと思います。やっぱり全員が勝ちに、同じ方向を向いていることが大事だと思う」 3月20日。韓国・ソウルで初開催された公式戦の開幕戦。ドジャースはパドレス相手に終盤、逆転勝ちを収め、好スタートを切った。日米を通じて初対決となったダルビッシュ有からの初安打をはじめ、2安打1打点と貢献した大谷は、すがすがしい笑顔で試合を振り返った。 「最初のスタートとして、まず勝てたのが良かった。最後まで粘り強くというか、諦めずに逆転できたのがチームとして良かったです」 目の前の試合結果に一喜一憂するつもりはない。 ただ、飽くなき野望を抱くドジャースの大黒柱として、大谷翔平が力強いストライドで走り始めたことは間違いない。
【Profile】
四竈 衛 1965年、長崎市生まれ。90年、スポーツ紙で取材・執筆を開始。93年から巨人を担当し、落合博満、松井秀喜らを取材。98年からMLBを担当。イチロー、佐々木主浩、松坂大輔など日本人選手全般を取材。2008年からフリーランス。著書に『メジャーにはばたく夢 イチロー2』『メジャーに輝く55番 松井秀喜』(ともに旺文社)など。アリゾナ州在住。