大谷翔平、山本由伸…巨額投資でメジャーリーグの盟主をもくろむドジャースの野望
一致したのは「勝利へのこだわり」
昨年12月14日、本拠地ドジャースタジアムで行われた入団会見で初めてドジャーブルーの背番号「17」に袖を通した大谷は、メジャー移籍後の6年間は届かなかったポストシーズン、さらに世界一を渇望する胸中をあらためて明かした。今年7月5日で30歳。「野球選手として、あとどれくらいできるかというのは、正直、だれにも分からない」と、これまで触れることの少なかった現役生活の将来を見据えたうえで、さらに言葉を続けた。 「優先順位は一番上。勝つことが今の僕にとって一番大事なことだと思うし、優勝に欠かせなかったと言われる存在になれるよう全力で頑張りたい」 大谷の入団決定後、フリードマン編成部長は襟を正すように表情を引き締めた。 「今後、いかなる場面でもいい選手を補強していくつもりだ」 その言葉通り、タンパベイ・レイズから時速100マイル(160.9キロ)の快速球を持つ先発右腕タイラー・グラスノーを交換トレードで獲得。さらに、5年総額1億3500万ドルで契約を延長した。その際、正式契約直後の大谷が、ビデオメッセージに出演し、「あなたのために本塁打を打つ」とアシスト役を買って出るなど、グラウンド外でも大谷の存在感は際立ち始めた。
オリックス・バファローズからポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指していた山本由伸投手との直接交渉には、大谷だけでなく、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、ウィル・スミスの4選手が同席し、共に食事をしながら山本に猛プッシュをかけた。 その結果、山本とはメジャーの投手史上最高額となる12年総額3億2500万ドルで合意した。昨年12月27日にドジャースタジアムで行われた入団会見で、山本は決断に至る理由を明快な言葉で表現した。 「自分の中で勝ち続けたい気持ちが強いというところが、優先順位に置いていた決断の理由でした。大谷さんがもし仮に他のチームを選んだとしても、もしかしたら僕はドジャースを選んでいたかなと思います」 強調したのは勝利へのこだわり。それはまるで大谷の言葉をなぞるかのようだった。 空前の大補強を終えたことで、ドジャースへの期待度は一段と高まった。オッズメーカーによる今年のワールドシリーズの予想でも、ドジャースは圧倒的な1番人気に挙げられている。それでもロバーツ監督は、大谷の加入が実現した感慨を「我々が夢見てきたこと」と興奮した口調で表現した。「常勝」を義務付けられ、世界一への重圧が双肩にのしかかることも覚悟の上だった。 「最大限に期待されるのは分かっている。ただ、ドジャース野球の歴史にとってグレートな日となった。我々はスポーツ界の中心にいるのだから」 世界中から注目され、常にプレッシャーを感じられることは、最高レベルのプロ集団を率いるロバーツ監督にとって本望だった。 「ここにいることが好きだし、我々はただ勝ちたいだけなんだ」