ラグビーW杯に挑む日本代表31人は最強メンバーと言えるのか?
9月20日に開幕するラグビーW杯に挑む日本代表メンバー31人が29日、都内のホテルで日本ラグビー協会により発表され、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは会見で選出理由と意図などを説明した。 2016年秋の就任以来、現状把握に四苦八苦しながら「ONE TEAM」という旗印を掲げてきたニュージーランド出身のヘッドコーチはこう宣言した。 「日本代表は結束力が高いチームです。ONE TEAMになった。チームのためなら何でもできる、身体を張れる、死ぬ覚悟で行けるという選手を鍛えてきました」 セレクションで重視されていたのは、現体制下での戦術遂行度と複数のポジションをこなせるかなどといった有事への対応力。主要メンバーは順当な顔ぶれで、サプライズ選考があったとしたら、代表歴のない北出卓也の選出くらいだった。 混とんとした状態から素早く攻撃システムを組み立ててスペースを攻略するのが、ジョセフおよびトニー・ブラウンアタックコーチの目指すスタイル。今回のメンバー選考では、キャップ数(代表戦出場数)に表れる経験値より、その目指すスタイルの遂行力などが重視された。フォワードでは、ハンドリングスキル、司令塔団(スクラムハーフ、スタンドオフ)では視野の広さやキック力、ウイングやフルバックでは空中戦での強さなどがチェックポイントとなったように映る。 フルバックとアウトサイドセンターのできるウィリアム・トゥポウ、フルバック兼ウイングの松島幸太朗、インサイドセンターとアウトサイドセンターを任されるラファエレ ティモシーと、複数のバックス陣に多チャンネルで、スタンバイさせるのも特徴。 「(軽度の怪我などのアクシデントに対しても)31名のなかでカバーできるよう試行錯誤し、今回のメンバーになっている」とジョセフは言った。
W杯イングランド大会メンバーは10人が連続選出
3勝した4年前のW杯イングランド大会のメンバーは、2大会続けて主将となるフランカーのリーチ マイケルを筆頭に10名が残った。そこには唯一の専任スタンドオフとなった田村優も含まれ、指揮官によれば「もし南アフリカ代表戦で田村が捻挫した際、(内々に定めたバックアップメンバーと)入れ替えるかと言えば、答えはノーです」。ウイングの福岡堅樹、左プロップの稲垣啓太、フッカーの堀江翔太、38歳で4大会連続出場となるロックのトンプソン ルークらとともに交替の利かないタレントとして重宝される。 一方、イングランド組の全てが選ばれたわけではない。今年のチームは、約60名の候補をウルフパック(対外試合で選手を鍛えるべく今年結成)、サンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに出る日本チームで2016年に発足)というふたつの団体に振り分けて活動し、段階的に人員を絞ってきたが、トレーニングのペースを上げる段階で注目の顔ぶれが相次ぎ選外となった。 6月の宮崎合宿の際は、インサイドセンターの立川理道、ウイングの山田章仁が落選。ウイングには、最終的にメンバー入りする大型ランナーのアタアタ・モエアキオラが「ポテンシャルがある」からと抜擢され、インサイドセンターでは、中村亮土が防御力を武器にレギュラー入りした。 専門職のスクラムハーフでも、昨季再ブレイクした2015年組の日和佐篤が、立川らと同時期に最前線から退いた。選ばれた田中史朗、流大、茂野海人の3人のうちW杯経験者は田中のみだが、流はリーチ、中村らとともにリーダー陣に名を連ねてグラウンド内外で信頼されていて、茂野は今年のサンウルブズの活動で一気に存在価値を高めた。 8月18日からの11日間は、北海道・網走で残された41名が最後のサバイバルレースを実施。イングランド組の山下裕史も参加した右プロップのセレクションでは、韓国出身の具智元、トンガから来日後に転向したヴァル アサエリ愛、今年代表デビューの木津悠輔がリストアップされた。なかでもヴァルは攻撃スキルが高い。 サプライズと言えそうな北出の抜擢は、ポジション独自のスキルで決まったようだ。北出はラインアウトのボール投入役となるフッカーで、かねてから当確とされた堀江、坂手淳史に次ぐ3番手の立ち位置。ずっと同じサントリーの堀越康介とその座を争ってきた。