改めて知りたい「モンテッソーリ教育」 専門家が教える家庭での実践法
モンテッソーリ教育の5つの教育分野
幼稚園や保育園などの教育施設でモンテッソーリ教育を実施する際には、上記の表にある「5つの教育分野」を実践します。0~歩行完了までのニドクラス、歩行完了~2.5/3歳までのインファントコミュニティクラス、2.5/3~就学前までのプライマークラスの異年齢でクラス構成がされています。 各発達段階によってクラスが分かれているため、特に年齢が低いニドクラスではこれらの「5つの教育分野」に入る以前の活動を実施します。その後のインファントコミュニティクラスでもこの中での「日常生活の練習」や「言語教育」も含め、「自分を創る」ための主体的な活動を日々行います。プライマリークラスになると、このような「5つの教育分野」をお子さんの興味関心、発達段階によって主体的に行っていきます。 【1:日常生活の練習】 日常生活の練習の目的は、人格形成の基礎をサポートし、環境への適応、自立を促すことです。 子どもが自分の身体を調整し、自分の思い通りに身体を動かせながら、様々な活動を行います。活動の内容は発達段階によって異なり、縫いさしなどの「手と目の協応」、イスを運ぶなどの「基本的動作」、鼻をかむ、上着を着るなどの「自分に配慮すること」、お花をいける、パンをつくるなどの「環境に配慮すること」、ロールプレイングをする「気品と礼儀」、線の上を歩く線上歩行等の「運動の調整」などさまざまな活動があります。 このような活動を通して、自分の身体をコントロールして、集中し、「できた」という満足感や達成感が子どもの自立、環境への適応を助けていきます。さらには、このような経験の積み重ねが子どもの人格形成にも影響を与えるのです。
【2:感覚教育】 人間はさまざまな情報を感覚器官を通して得ていきます。モンテッソーリ教育の感覚教育では、一つの特性に特化した教具をもちいて活動します。 例えば、「赤い棒」という教具では、色、形状は全く同じですが、「長さ」だけが異なります。そのような教具を何度も触れて活動することで、抽象的な「長い」「短い」という概念を、手で触れることの「具体物」として子どもは認識していくことができます。 また、五感とされる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を使うさまざまな活動を繰り返すことで、感覚器官で得た情報をより詳細に、より差異を認識できるようになっていきます。こうして、世界にあるさまざまな基本的なことを感覚を通して体得し、さらに情報を得る感覚器官を洗練することに繋がっていきます。 【3:言語教育】 子どもはもともと言語を持って生まれてきていません。しかし、自分のいる環境にある言語に何度も触れることで、徐々に「言語」を自分の一部として獲得していきます。 言語教育では、子どもの興味関心、発達段階に合わせて「話し言葉」「書き言葉」「よみ言葉」をそれぞれの活動を通して子どもが獲得できるようサポートします。 乳幼児期のモンテッソーリ教育の言語発達では、「トータルリーディング(統合的読み)」を最終目標としており、ただ語彙を多く知っているだけではなく、行間や内包されている意味も含めて理解することを目指しています。 【4:数教育】 数教育では、教具という具体物を用いて十進法の規則や四則計算の原則を体得することをサポートします。 決して「計算ができる」ことが目標ではなく、数字が意味する具体的な量を体感し、数を理解していきます。 このように実際の具体物を通して体得した数的概念は、その後の抽象的な思考にも繋がっていきます。 【5:文化教育】 文化教育は、この世界で起きている事柄で子どもが興味をもつ幅広いテーマを扱う分野です。 具体的には、強化でいう理科や社会科に相当するような内容で、歴史や地理・地学、社会、宗教、動植物といったものです。また、美術や音楽など知識ではなく身近なものとして体験して感じることで、文化として獲得していきます。子どもの知りたい欲求や興味のあるものをもとに活動をしていきます。