「知的障害があっても良い親になれる」と政府が明言するイギリス 公的医療サービスが支援する先進地で見た日本との違い
この団体の担当者は「政府は『ファッション』のように良いことを言っているだけで、施策は実態を伴っていない」と批判し、こう嘆いた。「現場では親より子どもの安全が重視され、人手不足や予算の制約から親は十分な支援を受けられていない。成人向けと子ども向け福祉サービスの間で連携も取れていない」 親に知的障害がある場合、子どもの半数前後が里親や施設などに引き取られているという調査結果もあり、多くの親は子どもと引き離される不安を持っているという。 知的障害者の育児支援に詳しいブリストル大のベス・タールトン上級研究員はこう指摘する。「政府の手引は現場に知れ渡っておらず、自治体によって支援には差がある。子どもを社会的養護の仕組みに入れるよりも、親を含めて支援した方が長期的には子どもの利益や予算の節約につながると思う」 ▽取材後記 日本で「人権」と発言したら、左派の人間が肩に力を入れて声高に叫ぶイメージだろう。だが、欧米では政府の文書にも「人権」という言葉がよく登場するし、一般の人でもサラッと口にする。10年前にロンドン支局に駐在していたときも感じていたことだが、人権に対する意識の違いを改めて実感した。
一方で、日本人からすると英国のサービスは官民ともに、良くも悪くもいいかげんに映る。政府のお題目とは異なり、福祉の現場は人手不足や自治体間格差といった日本と同じ問題も抱えている。 ※ご意見や情報を取材班までお寄せください。メールアドレス jinken@kyodonews.jp