「知的障害があっても良い親になれる」と政府が明言するイギリス 公的医療サービスが支援する先進地で見た日本との違い
チームが支援する対象は主に軽度からボーダーラインの層だ。知能指数(IQ)では55~80が目安。公営住宅やアパートなどで自立生活する人がほとんどで、50~70人ほどを支えている。 ▽「とにかく早期の対応」 支援が必要そうなケースについて関係機関から連絡が入ったら、医師や福祉職ら関わっている人たちと協議。自宅を2~3回訪問し、家族関係やどんな手助けが必要かを調べる。 「本人が『子どもが欲しい』と思った段階や、妊娠が分かった早い時点から支援に入るのが理想的です」とパーネルさん。何か問題が起きてからでは結局、子どもを親から引き離さざるを得ず、親も子どもも心に傷を負ってしまうからだ。「とにかく早期の対応が重要」。パーネルさんは、何度も強調した。 支援の工夫として、親が子どもとうまく接している場面をビデオに撮って褒めたり、子どもが何を訴えているか写真を使って説明したりしている。自宅を訪問して個別の生活環境に応じて助言する。
チームは6人だけなので、日常生活の支援は福祉職が担う。多職種の連携や慈善団体との協力は欠かせない。「知的障害があっても、正しい方法で教えればできるようになる。医師や助産師、福祉などの専門職にもそれを伝える必要がある」とパーネルさん。そのため、関係機関への研修にも力を入れている。 ▽「権利擁護者」という仕組みがある 支援者が持つべき重要な視点としては、次の五つを挙げる。 (1)易しい方法でコミュニケーションを取る(2)親と一緒に取り組む(3)できないことではなく、できること、必要なことに着目する(4)必要であれば長期間支援する(5)求めに応じて権利擁護者を用意する。 権利擁護者は「アドボケイト」と呼ばれ、日本ではあまりなじみがないが、行政機関などから独立した立場で知的障害者や精神障害者の権利・利益を代弁する人のことだ。 知的障害などがあると、相手の話をうまく理解できなかったり、自分の希望を言えなかったりすることがある。そのため、障害者団体などが必要な場面に応じて職員らを権利擁護者として派遣する仕組みがあり、費用は公費でカバーされる。