恐ろしい…ジャック・アタリ氏が「人工化」を“脅威”と呼ぶワケ 人類が辿る〈自滅〉のシナリオ
すでに始まっている、人類「自滅」へのカウントダウン
これらすべては、夢物語ではない。人類史には、無意識だったにせよ、自殺行為におよんだ民族や文明の例がたくさんある。オデュッセウスの立案した木馬をトロイの城内に運び込ませたトロイア人の判断、ナチズム、イースター島の森林伐採、マヤ人の耕作地の破壊など、間違い、先延ばし、無知、指導者やイデオロギーへの陶酔により、これまで数多くの強靭で傲慢な文明が、自分たちに悪影響をおよぼす恐れのある事象を無視した結果、消滅してきた。 今回、危機にあるのは、太平洋の孤島でも、小アジアの沿岸部にある忘れ去られた町でもなく、人類全体だ。人類は、無分別と先延ばしによって絶滅するかもしれないのだ。 1942年2月に民主主義の勝利を確信できなかったために自殺したシュテファン・ツヴァイクや、将来の課題に立ち向かうよりも自殺を選択する今日のアメリカやヨーロッパの若者のように、「気候」「超紛争」「人工化」という3つの脅威は、人類を自殺に追い込む恐れがある。 しかしながら、最悪の事態に見舞われると決まったのではない。方針を抜本的に転換するのなら、人類全員にとって明るい未来が訪れる。 【著】ジャック・アタリ(Jacques Attali) 1943年アルジェリア生まれ。フランス国立行政学院(ENA)卒業、81年フランソワ・ミッテラン大統領顧問、91年欧州復興開発銀行の初代総裁などの、要職を歴任。 政治・経済・文化に精通することから、ソ連の崩壊、金融危機の勃発やテロの脅威などを予測し、2016年の米大統領選挙におけるトランプの勝利など的中させた。 林昌宏氏の翻訳で、『2030年 ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』『食の歴史』『命の経済』『メディアの未来』(プレジデント社)、『新世界秩序』『21世紀の歴史』、『金融危機後の世界』、『国家債務危機――ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』『危機とサバイバル――21世紀を生き抜くための〈7つの原則〉』(いずれも作品社)、『アタリ文明論講義:未来は予測できるか」(筑摩書房)など、著書は多数ある。 【訳】林 昌宏 1965年名古屋市生まれ。翻訳家。立命館大学経済学部卒業。 訳書にジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』『食の歴史』『命の経済』『メディアの未来』(プレジデント社)、『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』(いずれも作品社)、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』(吉田書店)他、多数。
ジャック・アタリ,林 昌宏