恐ろしい…ジャック・アタリ氏が「人工化」を“脅威”と呼ぶワケ 人類が辿る〈自滅〉のシナリオ
教育の人工化
財源不足と人口の増加のため、質の高い教育を受けることができるのはハイパーノマドと上位中流階級の子供たちだけという傾向が、今日よりも強まる。定住民とノマドを含む人類全体の3分の2は、実際の学校に通うことができず、オンライン授業(文化、言語、年齢に関係のない国際的なカリキュラムを採用)を受ける、あるいは宗教原理主義者の餌食になる。宗教原理主義者は、独自の方法で大勢の人々を教育し、彼らを支配する。またしても、こうした事態に対する準備は、まったくできていない。 その後、記憶力を高めるために脳に人工物を埋め込む時代が訪れる。平常心、集中力、知的能力を向上させるという口実のもと、他者の精神状態を読み取ることによって、相手の思考に入り込む。このとき、思考を伝達することによって、脳が操作される。脳の計算能力を高めて自意識を把握するという口実のもと、脳のデジタル・コピー版が開発される。こうして、脳と人工物のハイブリッド型知性の時代が訪れる。人間の介入なしに自律的に意思決定をする人工知能を搭載する人工物の用途は、さらに拡大する。このような事態を事前に予見し、対策を講じておかないと、これらの人工物が製造者である人類に反旗を翻すことも考えられる。
情報の人工化
ジャーナリズムの新たな形態が誕生する。紙の新聞、テレビ、ラジオ、書籍は減り続ける一方、ポッドキャスト、プラットフォーム、ビデオゲーム、ヴァーチャル世界、ホログラム、クローンは、増え続ける。簡単な指示によって情報を生み出したり、大量のデータを自動的に解析してあらゆる分野の予測を常時提供したりできるようになる。 チャットGPTのバージョンが25になるころには、作家、ジャーナリスト、哲学者には、大した仕事が残されていないだろう。 現実の出来事と見間違うような興行が増える。個人の興味に沿うため、さまざまな興行が催される。メディアは、これらの興行への大衆の依存度を高める環境をつくり出す。こうした観点から、映画は、ライブの興行、芸術、スポーツイベントよりも脅威にさらされる。