女王・スペインとの「1点差」に見えた現在地。アクシデント続きのなでしこジャパンはブラジル戦にどう勝機を見出す?
パリ五輪開会式前日の25日に、ナントで行われた女子サッカー初戦。なでしこジャパンは世界ランキング1位のスペインと対戦し、1-2の逆転負けを喫したが、王者を苦しめた前半の45分間に、ワールドカップからの進化の軌跡を示した。絶対的な主力の清水梨紗が初戦で負傷によりチームを離れ、フランス高速鉄道での足止めなどアクシデントも重なる中、負けられないブラジル戦にどう勝機を見出すのか? (文=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=AP/アフロ)
スペインを面食らわせた4-4-2。世界を驚かせた藤野の先制弾
なでしこジャパンはパリ五輪初戦でスペインに1-2で敗れ、黒星スタートとなった。同じ相手に4-0で快勝した昨夏のワールドカップから1年。前回の対戦時は8割方ボールを支配されながら、洗練されたカウンターで仕留めたが、同じようにはいかなかった。 この1年間で、両国の女子サッカー代表チーム事情は大きく変化した。スペインはワールドカップ優勝後、サッカー連盟前会長による表彰式での選手への“キス問題”に端を発する連盟と選手の対立が続いていた。だが、ピッチ上での強さは揺るぎなく、UEFA女子ネーションズリーグでも初のタイトルを獲得。世界ランク1位の座を揺るぎないものにしている。一方なでしこジャパン(ランキング7位)は、海外の強豪クラブでピッチに立つ選手が増え、個人戦術やフィジカル面も向上。就任4年目の池田太監督は、ワールドカップからメンバーをほとんど変えず、組織力を高めてパリ五輪に臨んでいる。 まず驚いたのは、なでしこジャパンの先発リストだ。メンバーというより、スタート時のフォーメーションに目を見張った。4-4-2は、2021年から22年にかけての池田ジャパン初期では見られたものの、3バックを基本フォーメーションに変えた2023年以降、ほとんど見なくなっていた。この1年間は、戦い方の幅を広げるために4-3-3や4-2-3-1もオプションとして活用してきたが、4バックが効果的に機能した試合は少なく、未完成の印象が強かった。 だが、この大一番で王者にその積み上げをぶつけた。不安はいい意味で裏切られた。 「4バックだと、アンカーとかボランチが下に落ちることによって5枚を形成できるし、片方を上げて3バックも作りやすいし、相手の位置からプレスを変えられる。状況や選手のアイデアによって可変できる面白いフォーメーションだと思うし、中盤に厚みを出せるオプションだと思います。スペースの使い方や距離感などは落とし込めていない部分が多かったのですが、フランスに入ってから、練習でトライしながらうまく積み上げられていると思いますし、試合でどう活かせるかは自分たち次第です」 スペイン戦の前日に、藤野あおばが口にしていたビジョンと密かな自信。フランス入りから試合までの10日間の最終調整の成果は、特に前半の戦いによく表れていた。 日本は4-3-3、4-1-4-1、3-4-3、5-4-1と、自在に形を変えながらスペインのビルドアップを牽制し、縦に速い攻撃でゴールに迫った。記録と記憶に残るであろう、藤野の直接フリーキック先制弾につながった11分の攻撃シーンも、その一つだ。
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