「優れた監督とは…」コンテはナポリをどう蘇らせたのか。稀代の修復士が愛されるわけ「選手を合わせるものではない」【コラム】
ナポリが33年ぶりのスクデット獲得に沸いたのは2シーズン前。打って変わって昨季はリーグ戦10位と欧州カップ戦の出場権すら勝ち取ることができなかった。そんな不振に喘ぐナポリの復権を託されたのがアントニオ・コンテだ。現在リーグ戦10試合を終えて8勝1分1敗の首位と、短期間でチームを蘇らせたコンテの魅力とは?(文・佐藤徳和)
⚫️ナポリを蘇らせた男、アントニオ・コンテ
ナポリが盤石の戦いを見せている。 第6節のモンツァ戦以降、5連勝を収め首位をキープ。昨季は10位と不振を極め、一昨季に33年ぶりとなるスクデットを獲得したチームの姿は、もはやない。 開幕節のベローナ戦こそ0-3と完敗を喫したものの、第2節のボローニャ戦から、引き分けた第5節のユベントス戦を除いて、8試合に勝利を収めた。 チームを建て直した立役者は、紛れもなく指揮官のアントニオ・コンテである。ボロボロになった絵画を本来の状態に戻す、レスタウラトーレ(修復士)のように、凋落したチームを短期間で見事に蘇らせた。 23/24シーズンを終えて、08/09シーズン以来の二桁の順位に沈んだクラブは当初、アタランタの智将、ジャン・ピエロ・ガスペリーニの招聘も画策していた。だが、ガスペリーニにベルガモの地を離れる意志はなく、コンテに白羽の矢を立て契約を締結した。ナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長が昨年の10月から契約を希求していた大物監督だ。 契約は2027年6月30日までの3年契約。契約金は650万ユーロにプラスして成績に応じてボーナスが支払われる。セリエAでは、インテルのシモーネ・インザーギと並び最高給である。
⚫️コンテが影響を受けた3人の名将
南部レッチェ出身の55歳は、地元の有力クラブ、レッチェでキャリアをスタートし、91年から13シーズンに渡りユベントスで戦った。ジョバンニ・トラパットーニ、カルロ・アンチェロッティ、マルチェッロ・リッピの下でプレーし、5回のセリエA制覇に加えUEFAチャンピオンズリーグ(CL)で優勝を成し遂げ、そして、3人の名将から“帝王学”も学んだ。 現役引退後は、セリエBのアレッツォで指導者の道を歩みはじめ、レッチェの宿敵であるバーリの指揮官に就任し、2年目にはセリエA昇格を勝ち取った。 11年には古巣ユベントスと契約を結び、カルチョ・スキャンダル以降、不振に喘いでいたチームを再起させ、リーグ3連覇に導いた。しかし、クラブの補強戦略に不満を示し、指揮官の座を退任。その後は、チェルシー、ユーベのライバルであるインテルでも指揮を執り、それぞれのクラブでリーグ制覇を達成した。 コンテは、レッチェやユーベとの結びつきが強いが、感情的なつながりに固執せず、バーリやインテルといったライバルクラブを指揮して結果を残している。絶不調に陥ったチームを再建するには、これ以上ないうってつけの人物だ。