2025年大阪万博こそ「昭和100年」を象徴するイベント……終わらない昭和を古市憲寿が考える
口先ではオンリーワンな平成、そして
平成最大のヒットソングはSMAPによる「世界に一つだけの花」だ(注6)。 その歌詞が「NO.1にならなくてもいい」「もともと特別なOnly one」というのが象徴的である。まさに「平成」とは「ナンバーワン」をあきらめた日本が、何とか「オンリーワン」を模索する時代だったのかも知れない。 もしも本当に平成日本が「オンリーワン」を見つけられればよかった。だが実際の平成は、何とか昭和を延命させようとした時代に過ぎなかったのではないか。 社会学者の小熊英二((昭37)は、「平成」を、1975(昭50)年前後に成立した日本型工業社会が機能不全になる中で、問題の先延ばしのために補助金と努力を費やした時代だと総括した(注7)。 そして訪れた令和時代、いよいよ「昭和」は終わるのだろうか。 どうやら一筋縄ではいかなそうだ。そもそも令和は、昭和の再演から始まる予定だった。 2020(昭95)年に華々しく東京オリンピックが開催され、2025(昭100)年には大阪・関西万博が続く。2027(昭102)年には東京と名古屋間を結ぶリニア中央新幹線が開通する。さらに2030(昭105)年は札幌オリンピックが開催される。 これが、予定されていた「令和2年から令和12年」の日本なのだが、どうしても「昭和39年から昭和47年」を思い出してしまう。 すなわち、日本の高度成長の最中に開催された1964(昭39)年の東京オリンピックと同年の東海道新幹線開通、1970(昭45)年の大阪万博、1972(昭47)年の札幌オリンピックの反復なのだ。まるで「昭和と同じことをすれば日本が復活する」という呪術的な願望さえ感じてしまう。 だが目論見は外れた。新型コロナウイルスの流行により東京オリンピックは開催が延期され、反対運動も盛り上がった。リニア中央新幹線は当時の静岡県知事(昭23)の抵抗もあり工事が停滞、開通の目処は立っていない。札幌オリンピックは招致を断念した。 そして目下、大阪万博の開催を巡って大きな論争が起きている。奇しくも開催予定は、昭和100年に当たる2025年だ。 ※6 オリコンによると、平成期に発売されたシングルCDとして最も売れた。累計売上枚数は312.8万枚。 ※7 小熊英二編『平成史【完全版】』河出書房新社、2019年。「通常版(初版)」「増補新版」「完全版」の3種類が存在する「平成」っぽい本である。