「読み書きができないのは努力が足りないから」困難に負荷をかける教師の無理解 クラスに2~3人はいる学習障害(LD)の子、学びの道を切り開くのに必要なものは…
知的な遅れなどはないのに、文字の読み書きが困難な子どもたちがいる。生まれつきの特性である学習障害(LD)の一つで、「ディスレクシア」(読むのが困難)や「ディスグラフィア」(書くのが困難)と呼ばれる。計算ができないといったその他の特性も加えると、学習障害全体では公立小中学校に通う児童生徒の6・5%が該当するとした国の調査結果もある。35人クラスで2~3人となる計算だ。教師らの無理解から「本人の努力不足」と見なされ、不登校などの原因になることも多い。そうした逆境にもめげず、自らの手で学びの道を切り開こうという取り組みが始まっている。(共同通信=永澤陽生) 「発達障害ビジネスだ」専門医が批判、学会も認めない療法を勧めるクリニックの実態 患者の頭に「磁気刺激」、治療代に高額ローン組ますケースも
※この記事は記者が音声「共同通信Podcast」でも解説しています ▽講座の修了式は学校に望む配慮を伝える〝予行練習〟 2023年7月最後の日曜日。東京都内にあるビルの一室で一般社団法人「読み書き配慮」が主催する講座「KI KU TA」(機器も、駆使して、楽しく学ぶ)の修了式があった。都内に住む小学6年の山本英太君(11)は名前を呼ばれると、保護者らの前に立ち、プレゼンテーションを行った。スクリーンに自らの技能検査の結果を示しながら「僕は書く速さが小学2年生と同等です。まずはiPad(アイパッド)でノートを取るところから始めたいです」と発表した。 講座に参加したのは英太君を含む小5~中2の計11人。全員がディスレクシアなどの当事者で、計9回にわたり授業やテストでのIT機器を使った対処法を学んだ。プレゼンは一人一人が望む配慮を学校に伝える〝予行演習〟との位置付けだ。 ▽ひらがなの宿題で過呼吸に、でも知能検査は「異常なし」
両親が英太君の特性に気付いたのは、小学校入学直後のこと。自宅でひらがなの宿題に取り組もうとした途端にハーハーと呼吸が荒くなり、大声で泣き叫んだ末に、紙を破いて床にうずくまったまま動かなくなった。 父親の昌英さん(45)は「一つ上のお姉ちゃんは問題なくできたけれど、『男の子なのでちょっと遅いのかな。まあ、そのうちにできるようになるだろう』というぐらいの認識でした」と打ち明ける。 しかし学校で配られたドリルは、お手本の文字をなぞることはできても、いざ自分で書こうとすると書き順がバラバラに。一本線を「左から右に引くんだよ」といくら教えても、右から引いてしまう。母親の美奈さん(42)は「文字というより、まるで図形を描いているようでした」と話す。 知能検査の結果は異常なし。視覚の認知機能に問題があるのかもしれないと考え、電車で片道1時間かけて専門医がいる眼科に通い、目で見た図を正しく写したり、絵の中の間違いを探したりするトレーニングを受けさせたこともあった。