「読み書きができないのは努力が足りないから」困難に負荷をかける教師の無理解 クラスに2~3人はいる学習障害(LD)の子、学びの道を切り開くのに必要なものは…
それを身をもって体験した菊田さんは「学校側に特性をきちんと伝え、建設的対話につなげることが問題解決の第一歩」と話す。講座の目標は(1)IT機器を使いこなす技術を身に付ける(2)未来の自分はどうなりたいのかを考える(3)どのような配慮が必要なのかプレゼンできるようにする―の三つ。2024年1月現在、全国で計10回開催し、受講者は100人を超えた。 ▽来る日も来る日も職員室の前に…使う姿を見てもらい教師の反応が変わる 講座に参加する子どもたちの心強い味方は、同じ発達特性があるチューター役の大学生たちだ。その1人、濱地音安さん(22)は高校2年時の検査で「読みは小1程度、書きは小6程度」と診断された。 中学まではテストの問題文を読めなくても「いくつかの単語を見つけ、連想ゲームのように頭の中で組み立てる」ことで何とか乗り切った。私立の一貫校だったため、そのまま高校に進学。ある大学主催のプログラムに参加し、タブレットを使う方法に出会う。
濱地さんは持ち前の行動力を発揮し、来る日も来る日も職員室の前で教師を待ち構え、iPadから流れる音声を聞く自分の姿を見せた。「普段、そうやっているの?」。次第に教師の反応が変わり、授業にタブレットの持ち込みを認めてもらった。文章をタイピングで入力し、読み上げ機能を使ってイヤホンで聞けるようになった。 ▽「もがき苦しみ、自己分析した」大学生、「失敗の先」にあるものは… 濱地さんはその後、慶応大学にAO入試(当時)で合格。現在は休学し、発達障害がある人の就職を支援する会社を立ち上げる準備をしている。 今の自分があるのは「もがき苦しみ、自己分析をした経験があるからだ」と濱地さん。講座の修了式では、子どもたちに、ただ配慮を求めるのではなく「どんどん挑戦し、失敗してください。そこで『助けてください』って言えば、助けてもらえる」とエールを送った。 英太君は恐竜が大好きで、将来は古生物学者になることを夢見ている。講座から帰ると「表情がキラキラしていた」(美奈さん)。濱地さんたちから大学での研究の話を聞き、知的好奇心が刺激されたようだった。今は春から進学する中学で、どのような配慮が必要か学校側と話し合いを続けている。
菊田さんは言う。「子どもたちはできないこともあるけど、誰もが人と比較にならないぐらい輝いている。そこをとがらせて、生きていってほしいと思います」