「読み書きができないのは努力が足りないから」困難に負荷をかける教師の無理解 クラスに2~3人はいる学習障害(LD)の子、学びの道を切り開くのに必要なものは…
▽「プレッシャー」なのに、教師は「もっと文字を書かせて、本人に負荷を」 美奈さんは、英太君が大好きなポケモンのイラスト入りの「お母さんドリル」を手作りし、自宅で片仮名や簡単な漢字を一緒に練習した。しかし学年が上がるにつれて覚えなくてはいけない漢字が増え、そのやり方も限界に。 英太君は授業中、黒板を写さずにボーッとしていることが多くなり、4年生の頃から次第に学校を休むようになった。美奈さんは、担任が替わるたびに事情を説明し、漢字テストも受けさせなくて良いと伝えた。「読み書きがプレッシャーになっていたんだと思います」と振り返る。 文部科学省が2022年に実施した調査によると、公立小中学校の通常学級に通う児童生徒のうち、「聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する」のいずれかが著しく困難で、学習障害の可能性があるとみられたのは全体の6・5%。「読み」「書き」に限ると3・5%だった。耳で聞いた音韻を、頭の中で文字の形に結び付ける力が弱いのが背景にあると考えられている。
教師の中には、そうした特性を理解せずに、「もっと本人に書かせて、負荷をかけた方がいい」と、親を責めるような口調の人もいた。「ずっと孤独な闘いでした」(美奈さん) ▽「前例がない」とタブレットが認められなかった高校入試 5年生に進級した英太君は「発達性読み書き障害」と診断された。これから先、どうすればいいのか。悩みの中で出会ったのが「読み書き配慮」の講座だった。 菊田史子代表理事(53)の大学生の長男も文字を書くことが困難だった。ある時、タブレット端末のキーボード入力や読み上げ機能を使えば、書けなくても文章を作成できると知った。一方で高校入試では「前例がない」としてタブレット使用を認められず、学校探しに苦労した。その時の経験を踏まえ、全国で同じ境遇にいる人たちの助けになろうと決意した。 国は「GIGAスクール構想」を推進し、全国の小中学校の児童生徒に1人1台のパソコンやタブレット端末を配布している。しかし、読み書きのためのアプリをダウンロードしたくても、1人だけ認めるのは不公平だとして、受け入れられないケースがほとんどだ。