稲盛氏が「コピー代は2円」と答えた秘書を叱った訳 伝えたかった「労務コスト」と「経営者の視点」
さらに、経費という面では、稲盛さんからこのような指摘を受けたこともあります。 「今年の新入社員は何人だったのか」と聞かれたので、「グループ全体で500名ほどです」と答えました。稲盛さんから「どう思うのか?」と聞かれたので、「人事からは、優秀な社員が多いと聞いているので、よかったんじゃないでしょうか」と答えると、稲盛さんは「お前は経営が全然わかっていない。お前の感想はそれだけか?」と問いかけられました。
どう答えていいかわからずに黙っていると「1人当たりの生涯賃金は2億円ほどだ。500名採用したのなら、今回、1000億円投資したことになる。お前は経営者としてどう回収するつもりなんだ」と質問されたのです。 優秀な新入社員が入ってくることは当然いいことですが、それを私のように単純に喜ぶようでは経営者としては失格であって、「売上最大、経費最小」という視点からは、大きなコスト増にもなるということを私に伝えたかったのだと思います。
当然、社員の幸せを願い、社員を大切にしなければなりませんが、それを理由に労務費の管理が甘くなっては、経費最小を実現することも、高収益にすることも、企業を成長させることもできません。 それでは、社員を幸せにすることもできないのです。それゆえ、経営をするうえでは、常に労務費に対する冷徹な分析も不可欠だと教えてもらったのです。 ここまで説明してきたことは、稲盛さんから教えてもらった高収益を目指すために必要なことの一部でしかありません。
大切なことは、経営者はどんな苦労があろうと逃げることなく、まずは高収益を目指さなければならないという強烈な思い、願望を持つことなのです。なぜなら、高収益でなければ、全従業員の幸福は実現できないからです。その意味では、高収益を目指すことは、正しい経営をするための第一歩になるのです。 ■事業を再生させる10のキーワード では、長年赤字に苦しみ、もう復活は無理だと思われている事業をどうしたら再生できるのでしょうか。