稲盛氏が「コピー代は2円」と答えた秘書を叱った訳 伝えたかった「労務コスト」と「経営者の視点」
つまり、「すべてに意味がなければならない」のであり、そうしないと「ものすごいセンシティブなコスト意識」は生まれないというのです。 採算表のなかでは、「固定費や共通経費、雑費など、ついブラックボックスになりがちな科目にも細心の注意を払うべきだ。たとえば、固定費は分解したら変動費の塊かもしれない。共通経費、雑費も詳しく調べたら無駄が隠れているかもしれない」と、指摘していました。 同じような視点で、「買いに利あり」とも教えていました。
いつも同じところから同じ値段で買っていては、経費最小が実現できるはずはありません。鉛筆1本、紙1枚に対しても、購入価格に細心の注意を払うべきだというのです。 ■コピー代のコストは紙代だけではない コスト削減に関しては、私にはこんな経験があります。 あるとき、資料を持って稲盛さんのところへ行くと、「コピーをとってくれ」と言われたので、私は部下にそれを頼みました。そのときに稲盛さんから「コピー代はいくらだ」と聞かれたのです。
私も経費削減には努めていましたから、コピー代のことは頭に入っていました。「白黒で2円ですかね。カラーなら15円です」と答えました。 すると、「それでは経営者として失格だ」と叱られたのです。 わけがわからずに驚いた顔をしていると、「京セラの中間管理職の時間当たりコストは6000円ほどだろう。お前は部下にコピーをさせたが、それには1分間100円の労務コストがかかっている。コピーを取りにいって5分で帰ってくれば、本当のコピー代は500円と紙代になるんだ。わかるか」と指摘されたのです。
考えてみると確かにその通りで、コピー代は紙代だけでなく、労務コストもかかっています。しかし、私の頭からは労務費、つまり時間のコスト意識が抜け落ちていたのです。そのことを指摘され、自分のふがいなさを恥じ入りました。 日本ホワイトカラーの生産性が低いとよく指摘されますが、それは時間のコスト意識が希薄なことも1つの要因でしょう。稲盛さんが注意したように、1分間にどれだけの労務コストがかかっているかを理解するだけでも、自然と生産性は向上するのではないでしょうか。