『かぞかぞ』母の再手術、祖母の認知症…家族の話は喜劇に徹すると決めた七実「ウチの家族のことで笑ってくれる人がいたら最高」
NHKの連続ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(火曜午後10時)が7回まで放送された。全10回なので、残り3回。大学生からOLを経てエッセイストになった主人公・岸本七実(河合優実)とその家族の半生が描かれる 【写真】七実は家族のことが頭から離れない * * * * * * * ◆家族のことが頭から離れない七実 主人公七実の弟・草太(吉田葵)は明るく素直な青年だが、ダウン症だった。母親のひとみ(坂井真紀)も朗らかな女性であるものの、大動脈解離で倒れ、下半身不随となった。このため、七実は福祉に関わる仕事に就こうと思い、近畿学院大学の人間福祉学部に入った。七実は何かを決める際、家族のことが頭から離れない。 2019年に大学を出た七実の就職先もやっぱり福祉が関係していた。施設のバリアフリー化情報の提供などに取り組む会社だった。大学の先輩たちが起業した「ルーペ」である。 ところが残念なことに七実には会社員としての才能がなかった。一発芸的なアイディア力はあるものの、実務能力が皆無。アポイントを飛ばし、相手先に謝罪に行くことも度々あった。そして、再三注意されていたにもかかわらず、パソコンの電源を切らずに放置していたせいでウイルスメールを社内外に撒き散らしてしまい、同僚の怒りは限界に。会社にとって邪魔者になってしまい、七実は強い劣等感を味わう。 さらに七実は打ちのめされる。少しでも仕事上のミスを挽回するため、ネットメディアの取材に応じ、「ルーペ」の宣伝を図ろうとするが、聞かれるのは七実の家族のことばかり。父親の耕助(錦戸亮)が2010年に病死したことも含め、「悲劇だらけでも大丈夫」と記事に書かれてしまった。
◆悲劇かどうかは他人が決めるものではない 七実は悲憤する。無理もない。悲劇かどうかは他人が決めるものではないからだ。障がいがあるからといって悲劇ではない。 このエピソードは障がい者が登場するほかのドラマへのアンチテーゼでもあったのではないか、過去の障がい者が出てくるドラマの多くは悲劇として描かれた。 仕事での無力感と不本意な記事によって酷く落ち込んだ七実は家で寝込む。有給休暇を目いっぱい取った。七実のような人は珍しくない。成功している間は元気だが、心が折れると立ち上がれなくなる。 七実に限らず、登場人物たちはみんな身近にいそう。このドラマがウケている理由の1つにほかならない。出てくる人たちにことごとく現実味がある。原作が作家の岸田奈美氏(33)によるセミドキュメントということもあるだろう。 七実は寝込んでいる間、風呂に入る気力すらなかった。まるで仮死状態である。すると、普段は仲良しの草太の態度が違う。息を止めている。 「私、臭い?」(七実) 聞くまでもない。主人公の女性が臭いという設定のドラマはまずないが、これもリアリティを感じさせ、面白い。
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