米国“初”「1期のみ」の第二次トランプ政権の特異性、現実離れした公約の断行も、激変する米国内外情勢展望
トランプ1との違い
「トランプ2」は「トランプ1」のたんなる延長・継続ではない。最大の特徴は、昨年選挙で共和党がホワイトハウスのみならず、議会でも上下両院の多数支配体制を確立した点にある。 閣僚、ホワイトハウス高官人事についても、前政権発足時には国務、国防長官、国家安全保障担当補佐官らに共和党中道派のベテランを登用するなど、比較的バランスのとれたものだった。しかし、今回は初めから、トランプ思想を体現した保守派一色の布陣となっている。 加えて、最高裁もすでに9人の判事のうち、共和党系判事が6人と絶対的多数体制にあることから、トランプ氏は行政、立法、司法の三権すべてを押さえたことになり、今後、政策の立案、遂行面で野党民主党の主張を軽視し、意のままに振舞う環境が整った。 とりわけ新議会では、トランプ前政権当時とは異なり、共和党議員の中でも中道派に代わり、トランプ氏の息のかかった「アメリカ第一主義」信奉者が多数を占めることになったため、一層過激な法案提出などの動きが予想される。
議会における調査・監視機能強化の動きも要注意だ。とくに共和党保守派議員の間では、対中国警戒感が強く、例えば、すでに下院に特設されている「米国対中国共産党戦略的競争委員会(US and Chinese Communist Party Strategic Competition Committee)」が今後、中国による対米影響力行使の実態解明、先端企業サプライチェーン保護などの観点から、中国と関係の深い国内外企業、大学、研究機関関係者の議会証人喚問、違反摘発などを準備中と伝えられる。 上下両院の財政、歳出委員会などでも、バイデン政権時代の「インフレ抑制法」「半導体サイエンス法」関連で「浪費」「不正支出」を徹底的に洗い直す構えだ。調査活動などを通じ、場合によっては司法省、連邦捜査局(FBI)も強制捜査に乗り出す事態も否定できず、とくに対中国関連では、中国のみならず、中国と取引のある同盟諸国の企業の活動もターゲットになり得よう。 この結果、米中関係の一層の冷却化、同盟諸国間の摩擦も懸念される。