センバツ高校野球 聖光学院、先制実らず 430人の応援団拍手 /福島
第94回選抜高校野球大会第7日の25日、聖光学院は2回戦で近江(滋賀)と対戦し、2―7で敗退した。無安打のまま四球と犠打飛で1点を先制する泥臭い野球を展開したが、二回に先発の佐山未来(3年)が相手打線につかまり逆転を許した。反撃は三回の1点で止まり、夏に向けて打線に課題が残った。甲子園の過去最高成績だったベスト8の歴史を塗り替えようと、東北勢初の「日本一」を目指した選手たち。アルプス席に駆け付けた約430人の応援団からは温かい拍手が送られた。【玉城達郎、小林遥、小宅洋介】 聖光学院は2回戦も初回から動いた。先頭打者の主将、赤堀颯(3年)が今大会注目の投手、近江の山田陽翔(同)の球を見極め、四球で出塁。2番生田目陽(同)はきっちりと犠打を決め、続く三好元気(2年)も四球を選び、1死一、三塁で迎えた安田淳平(3年)が左犠飛を放ち、1点を先制した。 一塁側アルプスからメガホンを手にエールを送った野球部保護者会の小原孝嗣会長(53)は「好投手から打てて良い流れが来ている。このまま粘り勝ちしてほしい」と声を弾ませた。 この日も、初戦に続き佐山がマウンドに立った。初回から1死一、三塁のピンチを招くも、四番を併殺に打ち取り、切り抜けた。だが、二回に相手打線に捕まった。制球が乱れ、四球や単打などで1死満塁。右中間の2点適時二塁打を浴び、逆転を許した。その後も連打で5失点を喫した。 「これまで何度も劣勢の場面を見てきた。試合はまだまだこれからです」。アルプス席で応援団を引っ張る田口光禎さん(3年)は、さらに強くメガホンをたたいた。 反撃の起点になったのは赤堀だった。三回、先頭打者として左翼線へ二塁打を放った。続く生田目の内野ゴロの間に進塁し、三好が犠飛を放ち1点を返した。泥臭いプレーはここでも光った。 しかし、ここまでだった。近江の山田を前に、四回以降は計3安打に抑え込まれた。この冬に磨きをかけてきた打撃力を発揮することはできなかった。 三回に打ち込まれた佐山は試合後、「厳しいコースを攻めた結果だった。もっと大胆に打たせて取るようにすれば良かった」と振り返った。 全国制覇の夢はお預けになった。 ◇「次は自分が」誓う ○…一塁側アルプススタンドには控え部員や学校関係者、保護者らが駆け付け、黄色いメガホンを打ち鳴らし続けた。初戦を応援した後、学校に戻った控え部員らは24日午後6時半ごろにバス2台で学校を出発し、約11時間かけて聖地入り。先輩の雄姿を見届けた久保竣奨(2年)は「かっこいい姿を見せもらった。次は自分がグラウンドに立てるよう夏までに力をつける。オール聖光学院で最後まで闘い抜く」と、パワーアップを宣言した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇拳突き上げ、チーム鼓舞 聖光学院・赤堀颯主将(3年) 誰よりも気を吐いていた。逆転を許した直後の三回は、2球目の高めの直球を打ち返して二塁打に。「ここから行くぞ」。そんな思いを込め、塁上でベンチに向かって何度も拳を突き上げた。犠飛で本塁に生還すると、雄たけびを上げた。 斎藤智也監督らから「弱い、打てない」と言われ続けたチーム。指揮官は試合後、「弱さをカバーしたのは赤堀のリーダーシップであることは間違いない」と評価した。「彼がさらに一回りも二回りも大きくなることが、チームの成長につながると思う」 アルプス席から見守った父の匡さん(51)は感極まっていた。「素晴らしい相手と戦うことができ、幸せ者の息子だ。また甲子園でプレーがみたい」。ひたむきに白球を追う息子の姿を目に焼き付けていた。 試合後、赤堀は「未熟だった。甲子園に出たチームにしか味わうことのできない負けを頂いた」と語った。謙虚に闘志をみなぎらせた。【玉城達郎】