匿名・流動型犯罪グループ トクリュウの実態
暴対法と暴力団の衰退
それでは、なぜいま、トクリュウが日本社会の脅威になっているのであろうか。以下では、トクリュウの登場に至るまでの流れを概説する。 長らく日本の組織犯罪といえば、暴力団による犯罪が想定されてきた。暴力団が社会の脅威である現状は、いまなお続いている。ただ、その勢力は近年、急速に衰えてきている。 図1は、1991年以降の暴力団構成員および準構成員の数の推移である。準構成員とは、「暴力団の構成員ではないが、暴力団と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為を行う者、又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力若しくは関与する者」と定義されている。 この図からわかるのは、構成員、準構成員ともに、過去30年間で大きく減衰しているということである。91年には6万3800人もいた暴力団構成員は、いまでは6分の1以下の1万400人にまで落ち込んでいる。 (『中央公論』12月号ではこの後も、トクリュウ誕生に至るまでの流れ、今すぐできる自衛策、闇バイト参入をどうすれば減らせるかについて詳しく論じている。) 岡邊 健(京都大学大学院教育学研究科教授) 〔おかべたけし〕 1975年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士後期課程中退。博士(社会学)。科学警察研究所、山口大学などを経て現職。専門は犯罪社会学、教育社会学。著書に『現代日本の少年非行』、編著書に『犯罪・非行の社会学』『犯罪・非行からの離脱』、監訳書にティム・ニューバーン著『犯罪学』など。