古橋由一郎HCから「ようやったな」と言われるように "一番弟子"のDLは人生をかけて最終戦へ「ここぞというとき止めたい」
「男にはな、人生をかけて戦わなアカンときがあんねん」。これは、日本のアメフト界で最もよく知られるペップトークの出だしだ。かつて立命館大学パンサーズを率いて甲子園ボウル3連覇を成し遂げた古橋由一郎さんが、社会人チームとの日本一決定戦に臨む直前に、大学生たちの心に火を付けた。古橋さんは今年4月に近畿大学キンダイビッグブルーのヘッドコーチ(HC)に就任。その近畿大は関西学生リーグ1部の第6節を終えて4勝2敗。最終節の11月9日に3勝3敗の神戸大学と戦う。勝っても負けても初の全日本大学選手権出場の可能性は残るが、勝って他チームの戦いを見守りたいところだ。古橋HCが神戸大戦のキーマンの一人に挙げるのがDL(ディフェンスライン)の中山功乙(いさお、2年、近大附)だ。人生をかけてリーグ最終戦に臨む。 【写真】王者・関学戦でOLのブロックを割って入り、相手エースRBにタックルを決める中山功乙
中学までサッカー、テニス、水泳、空手を経験
第5節、東大阪市花園ラグビー場であった桃山学院大学戦。近大DLの中山は第3クオーター序盤、相手OL(オフェンスライン)のパスプロテクションをかいくぐり、パスに出たQB(クオーターバック)をタックル。両腕を東大阪の空に突き上げて喜んだ。DLの勲章とされるQBサックは今シーズン3度目だ。最終節を残して立命館大学の2選手と並び、リーグトップにいる。身長179cm、体重104kgとインサイドのDLとしては小さいが、それを補うクイックネスとスピードがある。神戸大戦に向け、中山は「ここぞというときに僕が出てきて止めたいです。ディフェンスには一人ひとりの役割が決まってて、それをやっていけば止まると思うので、次も変わらずに自分の役目を果たせたらと思います」と、慎重な口ぶりで言った。 大阪市生野区で生まれ育った。中学校まではサッカー、テニス、水泳、空手とさまざまなスポーツに取り組んだ。近大附属高に入学してアメフト部へ。OL(オフェンスライン)とDLを兼任していた。大阪のベスト4が最高成績で、関西大会や全国大会には進めなかった。日本一になりたいと思って進学した近大では昨年のルーキーイヤーから出番をもらった。2勝4敗1分けと苦しいシーズンだったが、中山はひたむきにプレーし続け、チーム内でのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。 中山のスピードが会場を驚かせたプレーがあった。4敗同士で迎えた甲南大学との対戦(17-17の引き分け)。近大が3点を追う試合残り2分あまり、甲南が長いフィールドゴールを狙った。これをディフェンス左からラッシュをかけたDB二宮政樹キャプテン(現・富士通)がブロック。中央から割って入っていた中山が跳ね上がったボールを捕り、迷うことなく走り出した。これが速い。仲間が追っ手をブロックしてくれたこともあるが、エンドゾーンまで60ydを駆け抜けた。逆転のタッチダウンとなり、近大のベンチと観客席は大いに沸いた。