【現地ルポ】シリア首都の今(後編)…政権崩壊の高揚と傷あと
■難民帰郷の今後…シリアの安定した統治は?
13年にわたる内戦でシリアから国外へ避難した人々は500万人にのぼる。シリア難民が流入した陸続きのヨーロッパ諸国は、右傾化するなど国際政治にも大きな影響を与えている。さらにアサド政権崩壊で、難民が国にすんなり帰れるというわけではない。避難先で定住しその国の労働力になっているケースもあるし、帰ったとしてもシリアに仕事があるとは限らず受け入れ態勢も整っていないなど問題は山積している。一方、反政府勢力による虐殺や迫害を恐れて、シリアから周辺国に避難するという人もたくさんいる。 国内ではクルド人勢力が広大な地域を支配下に置き、周辺からはイスラエルが混乱に乗じて緩衝地帯に軍を進めていて、シリア暫定政権は薄氷を踏むようなかじ取りを迫られる。 ダマスカスを後にして国境に向かう道中、乾いた山々は西日で真っ赤に染まった。チェックポイントの手前で車を降りると、日陰となった谷間を冷たい風が駆け抜けた。
■筆者プロフィール
末岡寛雄NNNニューヨーク支局長。「news every.」「news zero」のデスクやサイバー取材などを担当し、災害報道にも携わる。気象予報士。2021年から現担当。22年ウクライナ、23年イスラエルを取材。趣味はピアノ演奏。