愛媛・千町棚田の保存活動に尽力 高校生に支援金20万円贈呈
愛媛県西条市の千町(せんじょう)棚田の保存活動などに取り組む県立西条農業高校環境工学科の研究班が、高校生の農業の取り組みを支援する第8回「全国高校生農業アクション大賞」(毎日新聞社、JA全中主催)で支援対象となる全国15校のグループの一つに選出された。今後3カ年の活動に対し、支援金20万円が贈られる。 支援対象に選ばれたのは「千町棚田」の認知度を高め、市民を巻き込んだ棚田保存を行おうと2021年に始まった「つなぐ棚田遺産 千町棚田を守れプロジェクト」。千町棚田は16世紀後半、土佐の豪族によって標高150~500メートルの地で開拓されたとされ、最盛期には約80ヘクタールの面積に2500枚もの石積みの田が広がったと伝えられる。21年度には農林水産省の「つなぐ棚田遺産 ふるさとの誇りを未来へ(ポスト棚田百選)」に認定された。 しかし、プロジェクトによると現在の耕作面積は約10ヘクタールに縮小。放置竹林は約3ヘクタールで、耕作放棄地と放置竹林の広がりが大きな課題となっている。このまま耕作放棄地が増えると、棚田の本来の機能である水源の蓄え▽土砂の流出防止▽生物の多様性保存▽地球温暖化防止――などが果たせず、地域の憩いの場も失われてしまう。そんな危機意識から、生徒らはトラクターなどの運転技術を身につけ、棚田の保存活動に当たる地元のNPO法人「うちぬき21プロジェクト千町棚田チーム」と連携して土地の利用権を得たうえで棚田再生(水田化)に当たってきた。 NPOと共同で再生した耕作放棄地は21年度が約84アール▽22年度が約155アール▽23年度が約162アール▽24年度(予定)が約170アール――と順調に増えている。これらの土地は水田やフキ、ワラビ畑にして学校の行事「高校生レストラン」での食材に使われ、千町棚田のPRに役立っている。 また、3年間で延べ約60アールの放置竹林整備に当たり、竹を灯籠(とうろう)や食器などに加工。NPOとともに棚田ライトアップなどのイベントを繰り広げている。当初、生徒5人で始めたプロジェクトには現在、22人が参加。2年生の得居(とくい)大次朗さん(17)は「荒れていた田も、ちゃんと世話をするといっぱい米を作れることが分かった。竹林もきれいになっていくのがうれしい」と手応えを語る。 25年度にかけ、竹を利用した棚田の展望台(高さ約3メートル)を新たに作ることにしており、2年生の柴快心(かいしん)さん(17)は「展望台に上がり、ここに大きな宝があることをみんなに知ってもらいたい」と完成を心待ちにする。指導する成高久豊(なるたかひさとよ)教諭(64)は「棚田を守る気持ちが育ち、卒業生も活動を手伝いに来てくれるのが心強い」と話す。 千町地区の自治会長、山内隆彦さん(68)によると、地区の住民は現在、7世帯12人。山内さんは父親の介護を機に4年前に首都圏から帰郷し、23年秋には自宅の隣で1棟貸しの古里体験ハウスを開業して国内外の客を迎えている。「高校生の活動はたいへんありがたいこと。棚田の保全には厳しい面も多いが、古里の姿をできる限りとどめていきたい」と前を見据えている。 ◇ 今回の全国高校生農業アクション大賞で、四国ではほかに愛媛県立上浮穴(かみうけな)高校(久万高原町)の「くまもるず『天空の郷(さと)に伝わる地大豆・地雑穀の継承と普及 甦(よみがえ)れ! 地域資源復活プロジェクト』」が支援対象に選ばれた。同校は今夏、全国の高校生が地域社会の課題を解決するためのアイデアや研究成果を競う愛媛大学の「社会共創コンテスト2024」地域課題部門で最高賞のグランプリを受賞している。【松倉展人】