「悲劇的な結果につながる」ロシアで続出“四足歩行の若者”が大問題になっているワケ、ロシア正教も問題視
そのため、正教会の聖職者や厳格な信徒からすれば、動物を自身のアイデンティティとしたり、動物になりきって行動するといった行為は、聖書の教えに反する堕落した行為ということになるのである。 ロシア正教の司祭であるルキヤノフは、クアドロビクスについてこう述べ、強く批判している。 「クアドロビクスは子どもの遊びでもスポーツでもない。これは代替のアイデンティティを探すというサブカルチャーであり、子どもたちがLGBTを含む反価値(価値観に反すること)を心理的に受け入れる準備をするようしむける危険な社会的テクノロジーである」
ルキヤノフ司祭によれば、クアドロビクスはLGBTを受け入れるようになるための準備段階のような位置づけにあるという。代替的なアイデンティティを探す行為によって、子どもたちの人格形成を阻害し、最終的には人工的に形成されたアイデンティティやジェンダーを受け入れるようになるというのである。 こうした保守的な宗教的価値観に基づく危機意識は、ロシアでも一部の極端な意見に思えるが、実はそうとも言えない。ロシアでは、LGBTを宣伝する行為が、青少年の精神的発達に有害であるとして禁止されているのである。
■保守的価値観の権化はプーチン大統領 そして、こうした保守的価値観をはっきりと表明しているのが、ほかならぬプーチン大統領なのだ。プーチン大統領は、ウクライナ侵攻を開始した2022年2月24日の演説で、アメリカの価値観を退廃と退化につながるものとし、ロシア国民を内側からむしばむ偽りの価値観、ロシアの伝統的価値観を破壊しようとする試みだと断じた。同年9月30日の演説でも、西側の価値観を「悪魔崇拝(サタン主義)」だと述べている。
もちろんすべてのロシア人がクアドロビクスを危険視しているわけではない。専門家たちは、クアドロビクスを少年期の空想ゲームであり、ティーンエイジャーのアイデンティティ探求の1つの形であり、一種の社会化の形態であると考えている。大統領報道官のペスコフは、クアドロビクスについて、「大したことではない」と述べ、「その人気を過大評価する必要はない」と切り捨てている。 とはいえ、プーチン大統領が保守的な価値観、伝統的な価値観の維持、西側の価値観の影響を否定していることは、多くの人々や政治家にとって無視できない事実である。