「悲劇的な結果につながる」ロシアで続出“四足歩行の若者”が大問題になっているワケ、ロシア正教も問題視
一方で、こうした法的規制はクアドロビクスへの関心をむやみにあおることになるとして反対する議員もいる。現在、国会ではクアドロビクスを含む「破壊的イデオロギーのプロパガンダを禁ずる法律」の法案が作成中とのことで、この法案が成立するかどうかが注目される。 ■なぜそこまで問題視されているのか このような子どもの「遊び」まで厳格に規制することで、寛容性の低い、息が詰まる社会になりそうで心配だが、そもそもクアドロビクスがなぜこれほどロシアで問題視されるのだろうか。
ロシアのメディアでは、クアドロビクスは日本の四足走行ギネス世界記録保持者、いとうけんいち氏(100m15秒71)の活動が発祥であると言われている。 その後、英米圏でエアロビクスと美容体操のコンビネーション、一種のスポーツとしてクアドロビクスとして扱われるようにもなった。「British VOGUE」(2024年7月)でも、「クアドロビクスは全身の筋力を改善するフィットネストレンド」と題して取り上げられている。
ところが、ロシアで問題視されているクアドロビクスには、スポーツやフィットネスとは少し異なる側面も見られる。一部のクアドロバーは完全にネコや犬などの動物になりきり、これらの動物のように口だけで食事をしたり、四足歩行で街中を散歩したりしているようなのだ。 これは、いとう氏のように四足走行でスピードを競うとか、全身の筋肉を強化するフィットネスだとかいう話とは異なる次元のものである。そのため、むしろ、「テリアン」と呼ばれる人々に近い動きだと考えられている。
テリアンとは、自分のアイデンティティを何らかの動物として受け止めている人のことで、動物になりきっているクアドロバーの様子がテリアンと親近性があると受け取られているのだ。 ■ロシア正教が大問題と見ている理由 特にこれを問題視しているのが、ロシアの一般的な信仰であるロシア正教会である。正教会はキリスト教の一派であり、キリスト教は動物と人間との間に画然と境界線を引き、人間を万物の霊長(最も優れている者)と規定している。