「私の給料を知ってるのか?」敗戦後、日本メディアの質問にマンチーニ監督ピリピリ…日本とサウジアラビアの明暗はなぜ分かれた? 現地で見た舞台裏
選手たちが語った勝因「普通に考えて…」
ベンチスタートで後半の81分にFW小川航基のチーム2点目をアシストしたMF伊東純也は「(前半は)相手がボールを持つ時間が長かったり、相手が奪った後にイージーなミスで攻撃できないことは多かったかなと思いました」と語っていた。 うまくいかない中でも失点せず、2-0という結果を生んだのは、総合的なクオリティのところで日本が上回ったというシンプルな理由によるものだ。 前半の14分にMF鎌田大地の先制点をアシストしたMF守田英正は、第一の想定ではなかった相手の4バックに対して試合中にアジャストを試みたものの「結局上手くいかなかった」としながらも、勝因をこのように振り返った。 「相手は後ろに人数をかけるし、ボランチも下りてきたりするけど、怖いところに配球できる選手がいなかった。センターバックもフリーにさせても良い感じだった」 もちろん、早い時間に先制点を取ったことも大きい。守田はこのように言う。 「最初は(前から)行っていた分、蹴られた後はしんどかったけど、(日本が先制したことで)相手が来るという思考に変わってからは、ミドルブロックを敷いて上に行かない形を取れて、それで良くなったという印象です」 そして、MF堂安律。先制点の起点となるクロスを右サイドから上げた背番号10は、「普通に考えて僕たちはヨーロッパでやっているので、サウジリーグでやっている人に負けたらダメだなと思う」と自負を込めてコメントした。
マンチーニの嘆き…自国サウジリーグに“出られない”問題
マンチーニ監督の会見は「給料に見合わない結果」の質問を最後に終了となった。会見で指揮官は「日本という強いチームと戦い、得点がなかったこと以外は良い試合だった。ビッグチャンスもつくっていた。70分間はフィジカル的にも非常に良かった。最後の20分間は少し落ちたが、ゴールを取りたいという姿勢で攻撃を続けた」など、強気の言葉を最後まで貫いていた。 W杯出場権獲得の道のりについては「オーストラリアと2位争いをする」と語ったというが、それも弱気になっているというよりは、現状を踏まえたうえでの回答ということだろう。 それに、クリスティアーノ・ロナウドやネイマール、カリム・ベンゼマといったビッグネームが、サウジアラビアリーグでプレーする心理的ハードルを下げたのは、国内リーグの選手で構成されるサウジアラビア代表が22年カタールW杯のグループリーグ初戦でアルゼンチンを破る金星を挙げたことも一因だろう。スター選手の気持ちがサウジアラビアリーグに向いた要因は巨額のオイルマネーだけではないのではないか。 ただ、ビッグネームの参入で主力選手のプレータイムは大幅に減った。マンチーニ監督は日本戦前日の公式会見で「選手たちは3年前は試合に出ていたが、今は50、60パーセントの選手が試合に出ていない。これが唯一の問題だ。年齢も重ねている」と嘆いていた。 アジアカップではラウンド16で韓国に延長PK戦の末に敗れ、北中米W杯アジア2次予選でヨルダンに敗れ、最終予選ではインドネシアに引き分けた。筆者がジッダ滞在中に会話したサッカー好きのサウジアラビア人は全員が「マンチーニは好きじゃない」「嫌いだ」と首を振っていた。「W杯には行けない」と寂しそうな人もいた。人気がないのは間違いない。 選手時代の活躍もさることながらイタリア代表監督として20年EUROを制した実績とプライドは今、最大の向かい風を受けている。サウジアラビアは15日、バーレーンをホームに迎える。日本戦以上のプレッシャーがかかる一戦となる。
(「サッカー日本代表PRESS」矢内由美子 = 文)
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