”ahamoショック”でワイモバとLINEMOが料金プラン改定、大手3キャリアで出そろった「30GB」各社の違い・特徴は?
ソフトバンクは、11月1日にワイモバイル、LINEMOの2ブランドで、料金プランを一部改訂します。ワイモバイルは「シンプル2 M/L」の「データ増量オプション」を倍増。Mプランと組み合わせることで、30GBプランが実現します。 【画像】KDDIはUQ mobileに30GBのコミコミプラン+を導入する。povo2.0は360GBトッピングを開始した 一方、LINEMOは、「LINEMOベストプランV」の段階制を廃止し、30GBまで2970円で利用できるようにします。当初はキャンペーンという形ですが、正式な料金プラン改定までこれを続けていく格好です。 ahamoの30GB化を皮切りに、UQ mobileが33GBプランを導入。povo2.0も安価に月平均30GBを利用可能な1年トッピングを開始しました。ソフトバンクがここに追随したことで、大手3キャリアで30GBプランが出そろった格好です。ただし、同じ30GBでもディテールには違いもあります。ここでは、それらの特徴を比較していきます。 ■ 中容量プランのデータ容量は各社30GBに、ただし金額にはわずかな差も ahamoのデータ容量改定が引き金になり、KDDIやソフトバンクもサブブランドやオンライン専用ブランドに30GBプランを導入します。UQ mobileは「コミコミプラン+」、povo2.0は「360GB(365日間)」トッピングがそれです。 ワイモバイルは、シンプル2のMプラン、Lプランでデータ増量オプションを5GBから10GBに倍増。Mプランの場合、元々のデータ容量と増量ぶんを合算すると30GBになります。LINEMOのLINEMOベストプランVも段階制を廃し、11月1日からフラットな30GBプランになります。 いずれも30GBプランというくくりにはなりますが、細かく見ていくとデータ容量には違いもあります。 例えば、ahamoは「dカード」で毎月の料金を支払っていると、「dカードボーナスパケット特典」として毎月1GBが追加され、31GBになります。「dカードGOLD」の場合、追加ぶんが5GBになり、データ容量は35GBに。クレジットカードは必須になりますが、最大で35GBまで増量されます。 これに対し、UQ mobileのコミコミプラン+にも、3GBのデータ容量を追加する「コミコミプラン+データ10%増量特典」が用意されています。こちらは、ahamoと違い、クレジットカードなどの条件はなく、コミコミプラン+を契約していれば自動的に付帯される特典。終了期間は未定で、期間限定のキャンペーンとは異なります。これを合算すると、コミコミプラン+は33GBになります。ahamoのdカードGOLD特典より2GB少ないものの、クレジットカードなしでも適用されるため、より幅広いユーザーが恩恵を受けられそうです。 povo2.0に関しては、360GBトッピングで30GBというのはあくまで12カ月で割ったときの話。極端な話、通信環境がいい場所であれば1日で使い切ってしまうことも不可能ではありません。また、1年かけて360GBを利用できるため、データ容量の前借りや繰り越しに近い調整を自分ですることができます。使い過ぎってしまった月の翌月に節約したり、逆に前月あまりデータ通信を使っていなかったときに思う存分通信したりといった柔軟性があるのが、1年トッピングのメリットです。 その繰り越しについては、UQ mobileのコミコミプラン+とワイモバイルが対応しています。逆に、オンライン専用プラン/ブランドのahamo、LINEMOは毎月30GBが付与される一方で、余ったデータ容量は月末で消滅します。対応していた方が使い勝手がいいことは間違いないので、この点ではコミコミプラン+やワイモバイルのシンプル2が一歩リードしていると言えるでしょう。 ■ 料金差に直結する通話定額、定額範囲の時間にも差が 料金はahamoとLINEベストプランVがともに2970円。 UQ mobileのコミコミプラン+は3278円と、前掲の2プランに比べるとやや高めになっています。 povo2.0は2万6400円とケタ違いに高い料金設定ですが、これもデータ容量と同様、1年間まとめての支払いになるため。1カ月にならすと2200円で、今回取り上げた料金プランの中では“最安”になります。 ワイモバイルのシンプル2 Mはデータ増量オプションとの合算で4565円と、他の料金プランより一段高めに設定されています。 ただし、ワイモバイルのシンプル2は家族割引や光回線とのセット割引が前提の料金になっており、条件さえ満たせば、ここから料金が割り引かれます。光回線とのセット割である「おうち割 光セット(A)」で1650円、支払いをPayPayカードにした時に受けられる「PayPayカード割」で187円の割引になり、これらを加味すると2728円まで料金が下がります。 また、データ増量オプションはデータ容量の増量に合わせて、7カ月目までの料金が無料になります。あくまで期間限定ではありますが、7カ月間の料金は2178円に。条件さえ満たすことができれば、povo2.0の1カ月換算に近い金額まで料金は下がります。ちなみに、povo2.0はau IDを紐づけ、au PAYを利用していると10%ぶんの料金還元を受けられます。これを加味した実質価格は1980円で、ワイモバイルよりも安くなります。割引や還元で抜きつ抜かれつの競争を繰り広げていると言えるでしょう。 金額水準という意味合いでは、ahamo、UQ mobile、LINEMOが近く、割引適用後のワイモバイルやキャッシュバック適用後のpovo2.0は一段安い設定になっていますが、ここにはカラクリもあります。後者の2プランに関しては、音声通話定額が含まれていないのです。音声通話を使った場合の金額は30秒22円。逆に音声通話定額をつけようとすると、ワイモバイルは「だれとでも定額+」で880円、povo2.0は「5分以内通話かけ放題」トッピングで550円の料金がかかります。 無料になる通話時間に違いがある点にも、注意が必要です。ahamoやLINEMOは、料金プランに含まれる形で1回5分までの国内通話が無料。UQ mobileは料金自体がこれら2プランよりやや高い一方で、無料時間が1回10分と長くなっています。 通話定額がオプションのワイモバイルも10分。これに対し、povoのトッピングは550円でワイモバイルのオプションより安い一方で、無料時間は5分と短くなっています。 データ通信全盛でLINEやメッセンジャーなどのアプリもある時代に音声通話をどう捉えるかは人それぞれですが、ほとんど使わないというケースであれば、割引適用後のワイモバイルやpovo2.0が割安と言えるでしょう。povo2.0の場合、通話定額をつけても実質価格は2530円で、他の料金プランをリードしています。一方で、ワイモバイルにだれとでも定額+をつけると、割引適用後でも料金は3608円(8カ月目以降)まで上がるため、音声通話の必要性を見極める必要があると言えそうです。 ■ 速度制限や海外ローミングの仕様にも違い、ユースケースで異なる最適な料金 30GB(やプラスα)のデータ容量を使い切ってしまった時の速度制限も、料金プランごとに違いがあります。ahamoは1Mbps。UQ mobileのコミコミプラン+やLINEMOも速度制限は1Mbpsで、比較的余裕のある速度です。画像や動画の多いサイトはやや遅さを感じるかもしれませんが、まったく使えないというレベルではありません。 povo2.0はトッピングを使い切ると、速度は128Kbpsに制限されます。こちらはメールなど、一部のアプリを除くとストレスを感じるような速度と言えます。 ただし、UQ mobileとワイモバイル/LINEMOは2段階の速度制限を導入しており、1Mbpsで使い放題というわけではありません。UQ mobileは50GBを超過した際に速度制限が2段階目に入り、128Kbpsまで速度がダウンします。LINEMOは、45GBを閾値にしており、これを超えると128Kbpsに制限されます。データ容量超過後、15GBまでは1Mbpsで利用できるというわけです。 ワイモバイルに関してはデータ増量オプションのことが考慮されておらず、1段階目の速度制限が事実上なかったことになってしまっています。閾値が30GBに設定されているため、データ増量オプションで増えた10GBを使い切った時点で速度が128Kbpsになってしまうからです。この点は、他社に比べて使い勝手が悪い仕様と言えそうです。逆に、1Mbpsで使い続けられるahamoがユーザーフレンドリーと言えるでしょう。 よりデータ容量を使いたいユーザーに便利なのがahamo。「大盛りオプション」を追加すれば、80GBものデータ容量が追加され、合計で110GBまで利用できます。 また、povo2.0に関してもトッピングを追加すればデータ容量を自由に増やすことが可能。短期間だけデータ通信を使い放題にするトッピングも用意されており、ここで紹介した料金プランの中では群を抜いた自由度の高さを誇ります。 また、ahamoは海外ローミングについても30GBの範囲であれば、無料で利用できます。 対するUQ mobileは「au海外放題」の対象で普段のデータ容量が減ることはないものの、24時間あたり800円~1200円の追加料金がかかります。 ワイモバイルは「海外あんしん定額」が利用でき、24時間980円から利用が可能。こちらも、UQ mobileと同様、国内用のデータ容量は消費されず、代わりに24時間あたり3GBが付与されます。LINEMOも、海外ローミングの仕組みはワイモバイルと同じです。 このように、同じ30GBプランでも細かな違いが多数存在します。 特に通話定額の有無や時間は、契約時によく確認しておきたいところ。海外ローミングの仕様の差も、渡航が多い人には決定的な差になります。一見同じような30GBプランですが、ユーザーによって向き不向きもあると言えるでしょう。 大手3社が30GBプランを投入したことで、楽天モバイルがどう動くのかも気になるところ。同社の「Rakuten最強プラン」は、20GBを超えると使い放題になり、料金が3278円に上がります。使い放題としては安い反面、データ使用量が20GB超30GBに収まっている場合、料金は大手3社と横並びか、やや高めになってしまいます。安さを売りにしていた楽天モバイルだけに、対抗策には期待したいところ。「Rakuten最強プラン2.0」が投入されるかどうかにも、要注目です。
ケータイ Watch,石野 純也