「虎に翼」登場人物が“振り切り”すぎ? 朝ドラなのに“王道”じゃない、異色作がヒットしている「その理由」
朝ドラこと連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)の勢いが止まらない。 6月21日放送の第60話の世帯視聴率は18.1%と番組最高を記録した。昨今、18%超えは快挙。もはや世帯視聴率が人気の指標にはならないとはいえ、ほかのドラマが10%前後であることを思えば、圧倒的な強さを感じざるを得ない。 【画像】「虎に翼」明律大学時代、大人気だった同級生といえば ■「振り切った人物」を描いてきた脚本家 安定した人気を誇る朝ドラの中でも『虎に翼』はとりわけ評判がよく、若い世代にも支持されている。これは30代の気鋭の脚本家・吉田恵里香の起用が大きな要因のひとつであろう。
2022年、恋愛に興味のない男女の交流と共生を描いたオリジナルドラマ『恋せぬふたり』で向田邦子賞を最年少受賞した次世代のエースによる朝ドラの突出した個性を、6月27日に放送された第64回を例にあげてみよう。 妻として母としてすべて失敗しながら、あっけらかんと再出発する人物が描かれた。 ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)の法学部の同期・梅子(平岩紙)の夫が亡くなり、遺産相続問題で揉めていたところ、夫の妾と梅子が溺愛していた3男坊とが恋愛関係にあったことが判明する。
夫の妾が息子まで奪っていくという昼ドラのようなドロドロのエピソードだが、この衝撃的な悲劇によって梅子は嫁や母という役割から完全に解放されるのだ。なかなか振り切っている。 もともと夫に妾がいて、ないがしろにされていた梅子が、弁護士資格をとった暁には離婚して息子の親権をとろうと努力していたことがすべて水泡に帰したにもかかわらず、遺産の相続放棄までして、じつに清々しい顔でこれからの人生に向かっていく。
法律の勉強を諦めてまで子育てを優先したのに報われなかった。妻としても母としてもうまくやれなかったと敗北を認めながら、むしろ爽快な顔をしている梅子。妻にも母にも向いてなかったと認めて開き直るのも悪くないというかのように。 朝ドラでこのような振り切った人物を描いた吉田恵里香が、これまで手がけたドラマにも異色作が多い。 男性が女性の生理に理解を示すオリジナルドラマ『生理のおじさんとその娘』(2023年、NHK)や漫画原作ながら男性同士の恋愛を描いた「チェリまほ」こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年、テレビ東京系)など。ドラマがあまり取り上げずにいた題材を軽やかな感触で、誰もが親しみが持てるように描いてきた。