「空き家の実家じまい」どうすれば… 「やみくもに手を付けないで」 専門家が教える遺品整理のポイント
「迷ったら残す」のも一つの手
家じまいは墓じまいと同様に、所有権のない親族であっても、後から「勝手に家を処分した」と言われることがある。例えば「遠方から通って手入れするのが大変で…」などと事前に困っていることを伝え相談しておくと、感情的な行き違いを防ぎやすい。
東日本大震災から「このままでは」
私が家財整理の専門会社を立ち上げたのは2015年。それまで30年近く秘書や経理職などで働いてきたが、50歳手前で「このまま定年を迎えて良いのだろうか」と漠然と思い始めた。そんなときに東日本大震災(2011年)が起き、母や弟が住む実家のある青森県八戸市も津波被害を受けた。
当時は多くの人が無力感を覚えたと思うが、私もそうだった。(震災後も)会社に出勤してデスクに向かい一日が終わるという日常は続いたが、「このままじゃいけない」「誰かの心配を安心に変えるような、手応えのある仕事をしたい」と思うように。起業セミナーに通い、知人と一緒に遺品整理などの会社を興して社長に就いた。
故人が生きた証
遺品は単なる物ではなく、故人が生きた証でもあり、家族の思い出でもある。空き家を売却するまでに10年かかったが「片付けてみて(親が取っておいた子の作文など思い出の品が出てきて)、どれだけ親に愛されていたか分かった」と言う人もいた。
人それぞれ
空き家は早く手を入れた方が傷みは少ないが、グリーフ(悲しみ)が癒えるまでの期間は人それぞれ。三回忌、七回忌などの節目に親族と話し合う、心の区切りを付けるなどして取りかかる人もいる。気持ちが整わないうちは無理せず、思い出の品は「迷ったら残す」のも一つの手だ。
〈うわの・たかこ〉
1964年、青森県八戸市生まれ。遺品整理士、一般社団法人終活カウンセラー協会認定終活講師。複数の企業で秘書や総務、人材育成などに携わった後、2015年から遺品整理や生前整理、空き家の整理などの株式会社ワンズライフ(本社・東京)代表取締役。