なぜコントレイルはクビ差勝利で史上初の父子無敗3冠偉業に成功したのか?
「2着馬に斜め後ろから終始プレッシャーをかけられていたので随分とエキサイトしていた。折り合い面でうまくリラックスして走らせることができなかったが、何とか我慢してくれた」とは、福永騎手のレース回想。 3冠挑戦馬にプレッシャーをかけたのは、直後でぴったりとマークしていたアリストテレスのルメール騎手だった。 この馬の父エピファネイアは福永騎手とのコンビで2013年菊花賞を制覇。種牡馬としては、先週、無敗で牝馬3冠を達成したデアリングタクトを輩出している。血統という名の“血の勢い“と適性で長丁場は苦にしない。しかも、鞍上のルメールは2016年サトノダイヤモンド、2018年フィエールマンと過去4年で菊花賞を2勝。距離、コース不問のオールマイティーながら特に長距離戦で実績を残してきた。 特に名を高めたのが15年前の有馬記念。ハーツクライの手綱を取り、無敗だったディープインパクトに土をつけた”スター馬キラー”である。だが、そのルメールでさえ、あと一歩が届かない勝負根性がコントレイルにはあった。 「凄くいい競馬ができました。コントレイルの外でマークして走り、直線で一緒にファイト。残る150メートルでフルパワーを発揮したけれど、相手は止まらなかった。強すぎる」 ジャイアントキリングはならず、無敗3冠馬に敬意を表した。 父のディープインパクトは、菊花賞で2着馬を寄せ付けずに圧勝した。だが、コントレイルはクビ差の僅差勝利だった。父との比較で、力及ばずとの見方もあるが、むしろ、この僅差勝利に真の強さを感じさせる。そう育てあげたのは、馬主、牧場を含めたコントレイル陣営の総合力ではなかったか。なかでも、矢作芳人調教師はこの日の勝利で年間G1、4勝を2年連続でマーク。これはJRAとなってから史上初のことで、いかにトレーナーとして優れているかの証左になる。59歳を迎え、いまが人生の充実期。知識と経験と決断がうまくかみ合っているのだろう。