FRPなんてガン無視! デコトラ乗りが重くて高い「鉄」「ステンレス」で改造するワケ
デコトラの多くは鉄やステンレスのパーツを装着
自動車大国日本では、数多くの自動車愛好家たちが存在する。旧車やスーパーカーなどクルマ本来のもち味を重視する人や、市販されているクルマを自分好みにカスタムする人まで、愛車を家族同然のように可愛がり、そして大切に扱っている。速さを競う人も多く、彼らは車体をいかに軽くするかにこだわる。そしてクラッシュによる車体のダメージも勲章としている節があるため、見た目の美しさを大切にする一般的な改造車マニアと比較すると、少々異質な存在であるといえるだろう。 【画像】豪華な内装が美しい! きらびやかなデコトラのインテリアカスタムの画像を見る 自動車のカスタムには車高を落とす、オシャレなアルミホイールを履く、FRP製のエアロパーツを装着するといった3つが一般的ではないだろうか。そこにマフラーなどが加わることで、見た目と中身を仕上げてゆくのだ。FRPは軽量かつさまざまなデザインに対応することができるため、自動車業界でも大いに活用されている。 しかし、1970年代から今日へと続くデコトラは、少々内容が異なる。軽量かつデザイン製に優れたFRPには見向きもせず、重く加工が難しいステンレスや鉄でパーツを製作しているのだ。その理由はなんなのか、探ってみよう。 デコトラという文化がブームになったのは、先述したように1970年代後半のこと。1975年から1979年にかけて公開された映画『トラック野郎』の大ヒットにより、トラックを飾るというスタイルが脚光を浴びたのだ。もちろんその当時ではFRPが普及していなかったのだが、なによりもメッキをかけた鉄やステンレスで飾りを製作するというスタイルが一般的だったのである。
電気を通すことも装着される理由のひとつ
トラックとはハードワークに従事する仕事車であるため、仕事で走る距離も半端ではない。そのため、素材には軽さよりも強さを求めたのだろう。そして、光りものを好むデコトラの世界だからこそ、周囲の景色が映り込むような鉄メッキやステンレスに白羽の矢が立ったのである。 ちなみに、1990年代にFRPで製作された飾りがデコトラの世界に登場したことがある。その軽さや自由なデザイン性は話題となったのだが、浸透することはなく消えていった。やはり、デコトラ愛好家たちは輝きを選んだのである。 現代では諸外国のトラックを参考にした、欧米風やユーロ風のトラックも見受けられるが、それらは当然のごとくデコトラではない。デコトラが日本発祥の文化であることは周知の事実であるが、欧米風やユーロ風はネーミングどおり外国のカスタムを参考にしたものだからだ。 それでも、トラックの世界ではデコトラ人気のほうが圧倒的に高い。そのことからも、デコトラは日本人の心を強く刺激する存在であることが伝わってくる。 また、FRPとは異なり、鉄やステンレスは電気を通す素材であるのも重要な要素。デコトラには電飾による飾り付けも必須だが、光らせるためにはプラスとマイナスの電源が必要となる。クルマの車体にはマイナス電源のボディアースが流れているため、車体の鉄板部分に固定された鉄やステンレスのパーツにも、マイナスの電気が自ずと流れる。 そのため、プラスの配線をするだけで光らせることができるのだ。もちろんマッドガードや車内で使用されているような樹脂製のパーツは電気を流さないため、マイナスの配線もしなければならない。FRPも同様に、余分な作業を要してしまうのである。それもまた、受け入れられにくい要因のひとつであるのだろう。 そもそもデコトラの飾りはメッキをかけた鉄やステンレスで製作されたところから始まった。現代を生きるデコトラ愛好家たちはそんな当時のスタイルを尊重しているからこそ、新たなスタイルを見出すことをしないのだろう。むしろ、そのような行為は先人たちを冒涜するものだと捉えているに違いない。自分が刺激されたスタイルを崩さずに受け継いでゆくという気概もまた、日本人らしい奥ゆかしき部分が表れているといえるのではないだろうか。
トラック魂編集部