2年でふるさと納税額3倍。飛騨市のファーストペンギンが「一番に飛び込んだ海」
「市役所に染まる必要はない」ファーストフォロワーとしての念持
「香菜子さんが飛騨市に来る前に『凄い人が来るから、パフォーマンスが発揮できるよう好きにやってもらってね』と市長に言われました。どんな人が来るのかと思っていたら、朝の3時や4時から働き出し、お昼ご飯も(時間がないから)自席や移動中に済ませる人でした。(笑)」(上田さん) 長く市役所勤務だった上田さんにとって驚きの連続だったようだが、すぐに気づいた点があったそうだ。 「事業者のため、地域のために一生懸命に動いて下さってるんですね。そういった方がパフォーマンスを発揮できるため、自分にできることを考えました」(上田さん) 「香菜子さんが市役所の仕事に染まる必要はない」と考え、事務作業や組織内調整を積極的に取り組んだそう。行政には行政なりにお作法やトンマナがある。そこをいちから舩坂さんに理解してもらうのではなく、上田さんが担当することで、本来ある壁を壁でなくしていった。 「行政ならではの公平性・規律性に配慮した文書の作成方法、事業の進め方、内部調整があります。香菜子さんには行政の事務的な部分で時間をかけていただくのではなく、得意なことや、やりたいことは思う存分やっていただきたい。その方が、飛騨市や地域、組織のためになるんです。市長もそうおっしゃっていましたし、何よりも一緒に話しているだけで楽しい。面白いことを飛騨市で実現しようという共通意識があったと思います。官民がそれぞれの強みを生かし、価値を創造することが、今回のミッションだと理解していました」(上田さん) 2人が取り組んだふるさと納税事業は、前出の通りで2年目には11億円の寄付額となった。お礼の品の取り扱い事業者が40から100、お礼の品数が200から600に増加。 また、関係人口マッチングサービスはグッドデザイン賞を受賞(2021年)。飛騨市民の「困りごと」と参加者の「お助け」を循環させ、地域との交流と支えあいを創出するプロジェクトだ。主催者の創意工夫で用意する野菜等のお礼や、電子地域通貨を使った「オカエシ」を用意するなどし、地域経済の一助にもなっている。 舩坂さんがファーストフォロワーとして選んだ上田さんに、その念持を聞いた。 「ファーストペンギンになれる方って少なくないと思うんです。その中で、自分がそれを追いかけて一緒に変化していくならば、当然ですが人を選びますよね。熱量があって一緒に走りたくなるファーストペンギンが良いです。私はフォロワーとしても、しっかり基準をもっておく必要があると思います。 香菜子さんとご一緒して、事業者を巻き込んでいく姿や、組織を大きく動かしていく姿を目の当たりにしました。刺激を受けることが多かったのですが、何においても地域に密着してくださったので、その姿勢に刺激を受けました」(上田さん)