<春に駆ける’23センバツ専大松戸>第2部・支え/4止 育む「自主性」大切に 専属トレーナーでありファン /千葉
「例年に比べて重量が低い。ベンチプレスも100キロ上げられるようになっていない」 2月上旬、専大松戸の地下にあるトレーニングルーム。野球部の選手たちの輪の中心にいた鹿倉和也さん(35)が、厳しい口調で語りかけた。 チームは月曜と水曜を体を鍛えるトレーニングの日と決めている。共通のメニューを考え、一人一人の選手の体つきを確認しながら、つきっきりで指導するのがトレーナーの鹿倉さんの役割だ。 松戸市内で鍼灸(しんきゅう)院を経営している鹿倉さん。専大松戸の野球部に関わるようになったのは10年以上前のことだ。知人の紹介でグラウンドを訪れたところ、全力で野球を楽しむ高校生の姿に心を奪われた。ボランティアとして3年間サポートした後、2013年から専属トレーナーを務める。 鹿倉さんは選手たちの成長に合わせ、月に1度のペースでメニューを変える。本業の合間を縫って考えることになるが、「負担は感じない。どんな結果が出るのかという楽しみの気持ちの方が大きい」と言い切る。 指導で大切にしているのは、選手たちの「自主性」を育むことだ。新しいトレーニングを導入する時には、「どこの筋肉が鍛えられると思う?」と質問を投げかけ、選手に考えてもらう。 実は鹿倉さん自身もかつて高校球児だった。高校2年生の時に腰を痛めて苦しんだ時期があり、けがのつらさは身にしみて分かる。チーム内に負傷者が出た時は、自らの体験談を伝えることで精神面でも支えになってきた。 選手の前では時に厳しい顔を見せる。だが、自身が経営する鍼灸院には、専大松戸の活躍を伝える新聞記事が飾られている。来院した患者たちに誇らしげに語ることもある。「トレーナーでありながらファンでもある」と公言する。 センバツ出場を決めた選手たちは「歴史を塗り替える」と約束してくれた。それを陰から全力で支えるのが自分の役割だと思っている。「身を削ってでもサポートしたい」=おわり(この連載は近森歌音が担当しました)