600年受け継がれた福岡県の八女茶栽培。最高級茶葉「八女伝統本玉露」ができるまで…お茶の生産は気象条件、災害との闘いである
高品質な玉露の生産地である福岡県八女。そこで作られる八女茶の栽培方法は室町時代から受け継がれ、600年を迎えました。全国きっての高級茶葉「八女伝統本玉露」の栽培方法とは―― 【写真】2人用可搬型摘採機による茶摘みの様子 * * * * * * * ◆1年を通じて茶畑と向き合う 春になると、茶樹は長い「休眠」から覚めて、新芽の萌芽が始まります。 お茶を摘む時期が早い早生種(わせしゅ)は3月下旬頃、時期が遅い晩生種(ばんせいしゅ)は4月初旬から萌芽が始まり、およそ2週間をかけて新葉を開いていきます。 茶摘みの光景を歌った「夏も近づく八十八夜」というのは、立春から数えて88日目の5月初旬にあたり、新葉の摘採はまさに最盛期を迎えています。 そして、7月にかけて茶樹は成長を続け、一番茶摘採から約1ヵ月半で二番茶の摘採となります。 摘み採りの時期には、生産農家は摘んだ生葉(なまは)を荒茶(葉、茎、粉が混じったお茶の原料となる精製途中のもの)にする一次加工までを担い、茶畑での収穫、工場での加工と、最盛期は文字どおりフル稼働による生産体制となります。 お茶づくりというと、こうした収穫シーズンは想像しやすいでしょうが、実際には、このほかの時期にもたくさんの仕事があるのです。
◆お茶の葉一枚一枚に思いを込めて 茶樹の手入れ、病害虫の防除など、それぞれ時季に応じた仕事が控えており、また、一番茶、二番茶の摘み採りが終われば、次の春の新芽のために土壌づくりを行わなければなりません。「よい芽が出るように」、何度も肥料をまいて耕したり、消毒をしたり、畝の深耕をしたりして、茶畑の手入れには余念がありません。 生産者は1年を通じ、日々茶畑と向き合っているのです。 そして、その苦労やこだわりは、作るお茶や生産者によってもさまざま。毎年異なる気象条件、気象災害との闘いでもあります。 八女の茶園では、試行錯誤を重ねながら、お茶の葉一枚一枚に思いを込めたお茶づくりが行われているのです。 ここからは、茶の生産において重要な点を紹介します。