<磐城・センバツへの軌跡>Play Hard/下 文武両道、県内屈指の進学校 地域の子どもと交流 野球の楽しさ広め /福島
「野球やろうぜ! 集まれー」。1月22日夕。いわき市平の平第一小学校グラウンドに、磐城ナインの大きな声が響いた。「チーム分けはどうするの?」「俺、今日は調子いいと思うよ!」。小学校低学年の子どもたち20人が駆け出してきて、選手たちに飛びついた。「今のいいね!」「野球のセンスあるじゃん」。子どもたちのプレーに、選手たちが声をかける。グラウンドには子どもたちの笑顔が広がった。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 ナインは月2~3回、高校近くにある同小の学童保育に通う。ティーに乗せたボールを打つ野球に似たスポーツ「ティーボール」を教えたり、勉強を教えたりしている。子どもたちの名前を覚え、声をかけるときは必ず名前で呼ぶ。大好きなお兄さんたちが来る日は、子どもたちにとって特別な日だ。 少子化が進み、全国の高校で野球部員の減少が課題となっている。磐城ナインの取り組みは、地域に愛されるチーム作りとともに、野球の楽しさを地域の子どもたちに広め、磐城高野球部を志す子どもたちが増えることも期待する。 学童保育に子どもを預けている親は「普段は迎えに行くとすぐに帰ろうとするけど、磐城の野球部のお兄さんが来る日は、声をかけても気づかないんです」と苦笑い。選手たちにとっても「教える中で新しい発見や気づきがたくさんある」(小川泰生選手)と有意義な時間となっている。 ◇ ◇ 磐城高は文武両道を掲げる県内屈指の進学校だ。生徒の9割が何らかの部活動に入っている。どの部活動も「学校生活の第一義は学業である」という方針の下、平日の活動時間は午後4時半から約3時間に限られている。短い時間で効率的に練習に取り組むことを心掛けており、毎日の練習後に自分たちで考える翌日の練習メニューは分刻みだ。 定期試験はもちろん、放課後や長期休暇には、補習や模試を受けなければならない。県大会など公式戦と同じ時期に行われることも多いため、選手たちは練習後や宿舎で受けることもある。選手たちは通学途中や休み時間など「隙間(すきま)時間の勉強が大事」と口をそろえる。 磐城高では2月4日から学年末試験が始まる。選手たちは練習が終わると「集中して勉強しないと」「これってどう勉強してる?」と少し不安そうだ。勉強と部活の両立に苦しむ選手もいるが、木村保監督は「勉強も野球も両方頑張ることで集中力や人間力の強化につながる」と伝え続けている。 ◇ ◇ 先輩たちが築いてきた文武両道の精神を貫き、地域の人たちに支えられて成長してきた磐城ナイン。「Play Hard」の部訓通りの全力プレーで、甲子園での勝利を誓う。(この企画は磯貝映奈が担当しました)