「中長期の避難生活」を快適にするためのテクニック(専門家が監修)
連載「ジャングルブック」では、都市でも自然でも、いざという時の役に立つ“生き抜く力”にまつわる知恵を紹介。今回のテーマは「中長期の避難生活」。[監修・取材協力/伊澤直人(週末冒険会代表)※最新著作『焚き火の教科書』(扶桑社)好評発売中] * 避難所の収容人数不足は深刻だ。推計によれば、東京都区内では約60万人分も不足することが想定されている。避難所に入れず、在宅避難もできない―最悪のケースを考え、長期のテント生活に備えることは十分に現実的だ。 東日本大震災では、仮設住宅への入居開始は震災から約2か月後。物資を揃える際には、それだけの期間を視野に入れておく必要がある。 水や食料などは3~7日程度で配給が始まることを考えると、備蓄品の他に個人で充実させられるのは住環境だ。ポイントは2つ。まずは「立地」。広い公園や競技場、大型施設の駐車場などは、人が集まり、情報収集がしやすいだけでなく、ボランティアによる支援の手が届く確率も高い。そして、「居住空間」。長期ともなると、調理や着替えをしたり、荷物を保管したりと寝床以外のプライベートなスペースが必要となる。広いテントにイスやテーブルなどがあると、快適性が向上する。 ここで大切なのは、復興に向けて体力・精神力を回復していくことができるだけの生活レベルが、長期の避難生活には求められるということ。過度な備えは必要ないが、自分にとって最低限必要な要素を熟考したうえで備えるべし。
プライバシーを保てるスペースを確保する
災害や紛争の被災者に対する人道支援活動のために策定された国際基準「スフィア基準」によれば、人としての尊厳を保つために必要な最低限の居住スペースは、1人当たり3.5㎡(約2畳)とされている。日本の環境でこれを確保するのは難しい場合も多いが、災害対策も込みでテントを揃えるなら、最低でも収容人数+1~2人を目安に選ぶといいだろう。ただし、テントは大型になるとデメリットも多いため、4人用程度を目安に複数に分けるのが望ましい。