空間そのものを象った彫刻家のアトリエ兼住居『朝倉彫塑館』。
朝倉氏はそんな「自然観照の目を育む」哲学を後世にも熱心に伝えてきた教育者でもあった。経済的に恵まれない若い芸術家が無償で学べる『朝倉彫塑塾』を自宅で運営。土や植物を通して感覚を研ぎ澄ませようと屋上菜園をつくり、必修科目として園芸実習を行なってきたのである。
知れば知るほど、敷地内の空間そのものが朝倉氏の美意識を投影した最大の作品なのだと感じ取れる。勤務歴16年目の戸張さんでさえ「どこを切り取っても美しく、目線を変えると何度でも新たな発見がある」というが、それももはやこの建物自体が朝倉氏と言ってもいいからなのかもしれない。
インフォメーション
朝倉彫塑館 ◯東京都台東区谷中7丁目18-10 ☎︎03・3821・4549 9:30~16:30 月・木休 日本近代彫刻を牽引した巨匠の息吹きが感じられるミュージアム。自ら設計を行った3階建ての館自体もモダンで見応え抜群。取材時は朝倉文夫没後60年特別展「ワンダフル猫ライフ 朝倉文夫と猫、ときどき犬」が開催中だった。会期は12月24日まで。山手線沿いとは思えないほど静寂に包まれているここで、彫刻家の美意識を感じながらじっくり作品と向き合ってみては。 photo: Koh Akazawa text: Fuya Uto edit: Toromatsu
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