“顔面凶器”小沢仁志(62)が語る悪役論「悪い奴のバックボーンは見えないほうがいい」
ヤクザ組織と一般社会に通じるところ
――『日本統一』は2013年に第1作がリリースされ、今では女性のファンも数多くいます。どうして人気なのでしょう。 小沢:侠和会若頭の氷室蓮司(本宮泰風)と本部長田村悠人(山口祥行)の結束にボーイズラブの要素を感じる女性ファンもいるみたいだな。だけど、大勢の人が観てくれる一番の理由は、ヤクザもほかの世界も組織はみんな同じだからじゃないかな。 どんな組織もトラブルが起こる火種は人事と派閥。だから会社のCEOクラスも『日本統一』を観てくれている。まぁ、いかなる組織も派閥などにとらわれず、人材を適材適所で登用していくことが肝心なんじゃないかな。 ――シリーズはいつまで続くのでしょう? 小沢:最新の66作の発表がこないだあったからだまだ続くだろうな。 ――初のNHK大河ドラマだった『八重の桜』(2013年)でも仇役でした。官軍となった長州藩の幹部・世良修蔵役で、徳川幕府側の会津藩を情け容赦なく責め立て、恨まれて最後は暗殺されました。大河でも仇役を望んだのですか? 小沢:そう。善玉役の話もあったんだけど、引き受けると出演回数が長くなりそうだったから。そうなると、俺の出演料ではNHKの駐車場代が払えなくなっちゃうかも知れなかったんです(笑)。制作側からは「出演回数を気にする俳優さんは小沢さんくらいですよ」って言われたよ。
畳を見るだけで冷や汗が出る(笑)
――2019年に始まった『大富豪同心』もファンが多くいます。支持される理由をどうお考えですか。 小沢:心温まるところじゃないかな。浪花節的な要素がある。主演の歌舞伎俳優・中村隼人君が扮する同心の八巻卯之吉がゆるい男であるところもいい。 ――ほんわかした作品ですよね。小沢さんが演じる沢田にも温かみを感じます。 小沢:いや、沢田はお調子者でさ、人気芸者の菊野(稲森いずみ)に弱く、一方で上司と部下の間で板挟みになっている男なんだよ。そういう役割だって分かっているから、楽しいと言えば楽しいんだよ。 ――内与力らしいシーンもありました。 小沢:うん。縄で縛られた下手人たちをゴザに座らせて、「そのほうたち」なんて言うシーンがあった。だけど、どうもしっくりこない。いつもと逆だから(笑)。 ――確かに…。 小沢:この作品はアクションシーンがなかなかなくて。やっと立ち回りがあり、バッサバッサとぶった斬っていたら、殺陣師が「小沢さん、内与力の刀は斬れません」って。与力と同心の刀は刃が潰されていて、斬れないんだね(笑)。 ――楽しそうな現場ですね。 小沢:そうなんだけど、時代劇は畳のシーンがあるから辛い。長く激しいアクションシーンをやってきたせいで、両膝が壊れてしまい、正座ができないんだ。畳を見るだけで冷や汗が出る(笑)。 ――この作品は『絆…この手に』など竹島宏さんが歌うエンディング曲に合わせて出演者全員が踊るのも愉快ですよね。 小沢:沢田は劇中でもほぼ毎回、踊る。酔ったときとかね。「脚本家が遊んでるな」って思いますよ。振付師の人には「自由に踊ってください」と言われているけど、自由にやるほど難しいものはない。ダンサーじゃねえんだから(笑)。